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糖尿病(小児)[私の治療]

No.5044 (2020年12月26日発行) P.46

浦上達彦 (日本大学病院小児科診療教授)

峯 佑介 (日本大学病院小児科)

登録日: 2020-12-29

最終更新日: 2020-12-23

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  • 小児思春期の糖尿病のうち,1型糖尿病が全体の30~40%を占め,一方2型糖尿病の頻度は60~70%と年々増加傾向にある。また頻度は低いもののMODY(maturity-onset diabetes of the young)を含む,その他の特定の機序・疾患による糖尿病もある。

    ▶診断のポイント

    血糖値〔空腹時≧126mg/dL,随時≧200mg/dL,経口ブドウ糖負荷試験(糖負荷量1.75g/kg,上限75g)の2時間値≧200mg/dL,のいずれかを満たした場合「糖尿病型」〕およびHbA1c(≧6.5%で「糖尿病型」)が同一採血で,ともに基準の「糖尿病型」を満たした場合に「糖尿病」と診断する。いずれか一方の「糖尿病型」にとどまる場合は再度検査を行い,診断を確定する。

    【1型糖尿病】

    大多数の症例は膵島特異的免疫反応が関与し,GAD抗体,IA-2抗体,ZnT8抗体,インスリン自己抗体などの膵島特異的抗体が血中に検出される。その発症には遺伝的要因(HLAなど)や環境要因(ウイルス感染,食事性因子など)が関与すると言われている。発症形態は緩徐進行型から劇症型まで様々であるが,成人と比較し劇症型の頻度は低い。また,糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)で発症する場合や,学校検尿・糖尿病検診を契機にほぼ無症状で発見される場合もあり,診断には注意を要する。

    【2型糖尿病】

    大半は肥満を有し,80%の症例で家族歴を持つ。日本人の2型糖尿病は,欧米人と比べると肥満の程度が低く,血糖上昇に対するインスリン分泌能が低いことが知られている。非肥満や軽度肥満の症例であっても,思春期発来におけるインスリン抵抗性の増大に伴い発症することが多い。したがって,確定診断には膵島関連自己抗体の有無を検査することが望まれる。また,低出生および高出生体重児における発症の頻度が高いことが知られている。

    その他の特定の機序・疾患による糖尿病としては,Down症候群,Turner症候群やPrader-Willi症候群を代表とする染色体異常に伴う糖尿病や,MODY,インスリン遺伝子異常症,新生児糖尿病(ABCC8遺伝子,KCNJ11遺伝子異常)を代表とする単一遺伝子糖尿病がある。

    【糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)】

    ①血糖値>200mg/dL,②静脈血でpH<7.3またはHCO3<15mmol/L,③ケトン血症またはケトン尿がDKAの診断基準となる。1型糖尿病では,発症時や治療中でのインスリン自己中断,感染などを契機にしたシックデイ,重篤な全身性疾患などのストレスにより発症する。2型糖尿病では,清涼飲料水の多飲に伴うペットボトル症候群もその原因となる。

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