世界保健機関(WHO)のミッションで、エボラ出血熱の流行国リベリアに今年2度派遣された。1度目は「今思えば流行の前触れだった」5月。感染者が発生した奥地の病院で院内感染事例の調査を行った。当時リベリアの感染者は約30人。奥地での迅速な封じ込めの成功に「感銘を受けた」ほどだった。
2度目の8月、状況は一変していた。5月には感染者がいなかった人口100万人の首都モンロビアでは、患者が次々に病院に運び込まれるが、医療資源の乏しさから多くが治療を受けられず亡くなっていった。医療従事者の二次感染も深刻を極め、恐怖のあまり閉鎖する病院が相次ぎ、最低限の医療さえ麻痺状態に陥っていた。「エボラの感染力と致死率の高さ、社会への影響の大きさに衝撃を受けました」
加藤さんは、現地の医療従事者がエボラについて理解を深め、職場に戻れるようにする研修の支援に入った。4つの主要病院を回り、病態や疑い患者の見分け方、個人防護具の着脱方法をレクチャーした。「研修の間ずっと、これで一度病院から逃げ出した人が復帰してくれるのかと不安でした。しかし、最も感染リスクの高い隔離治療施設での業務に志願する100人以上の名簿に修了者の名前を見つけ、本当に勇気づけられました」
リベリアの感染拡大はなお続いている。「彼らは今も最前線で戦っていることでしょう」
残り353文字あります
会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する