Vogt-小柳-原田病(以下,原田病)は脈絡膜炎を主体とした両眼性の汎ぶどう膜である。全身のメラニン色素を標的とした自己免疫反応によって生じる。原田病はモンゴロイドに多く,わが国ではサルコイドーシスについで頻度の高いぶどう膜炎の原因疾患である。
2001年に原田病国際委員会から,国際診断基準が示されている。臨床所見は3つの病期(前駆期,眼活動期,回復期)に分類される。前駆期では眼症状に先行して感冒症状,頭痛,耳鳴り,難聴,頭髪の違和感などを認めることが多いため,丁寧な問診が重要となる。眼活動期では,前房内への細胞浸潤,多発性漿液性網膜剥離,視神経乳頭の発赤・腫脹,光干渉断層計(optical coherence tomography:OCT)にて著明な脈絡膜肥厚が観察される。回復期では6~7割の症例で夕焼け状眼底がみられる。その他,眼外所見として皮膚の白斑,白髪,睫毛の白変,脱毛などがみられる。髄液細胞数増多を認めれば診断は確定となる。原田病ではHLA検査で90%以上の症例がHLA-DR4陽性であり,診断の補助に有用である。
本症の病態は全身のメラノサイトに対する自己免疫反応のため,治療の中心はステロイドパルス療法,またはステロイド大量点滴療法と後療法としてのステロイド内服漸減療法である。
ステロイドパルス療法の場合,メチルプレドニゾロン1000 mg/日の点滴静注を3日間施行,その後は0.8~1.0mg/kg/日のプレドニゾロン内服投与に切り替え漸減する。再燃予防のため、ステロイドの減量は6カ月以上かけてゆっくりと行う。ステロイド大量点滴療法では,プレドニゾロン換算で140~200mg/日で3日間点滴静注を開始,その後は眼所見の改善をみながら漸減する。ステロイド漸減中に前眼部の再燃を認めた場合は,ベタメタゾンなどのステロイド点眼を用いて消炎を図る。後眼部に再燃を認めた場合は,ステロイド内服量の増加,あるいは再度ステロイドパルス療法を行い,前回よりさらにゆっくりと減量する。
高齢者で全身ステロイド治療の強化が困難な場合は,レスキュー治療としてトリアムシノロンアセトニドの後部テノン嚢下注射(sub-Tenon injection of triamcinolone acetonide:STTA)を行う場合がある。再燃を繰り返す症例では,シクロスポリンの導入を検討する。シクロスポリンの減量により再燃をきたす症例,またシクロスポリンによる腎機能低下などの副作用で投与の継続が困難な症例では,TNFα阻害薬であるアダリムマブの投与を検討する。
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