Minor脳梗塞と一過性脳虚血発作(TIA)に対しては、急性期から亜急性期にかけての短期間抗血小板薬併用(DAPT)が、抗血小板薬単剤に比べ、虚血性脳血管障害再発抑制の観点から有用だとされている。これらは主に“CHANCE”、“POINT”という2つのランダム化試験が根拠になっているが、POINT試験の追加解析の結果、DAPTが有用な患者群は一部に限られる可能性が示された。3月17日からオンライン開催された国際脳卒中学会(ISC)にて、Alexandra Kvernland氏(ニューヨーク大学ランゴーン医療センター)が報告した。
POINT試験の対象は、「NIHSS≦3」の脳梗塞、あるいは「ABCD2スコア≧4」のTIA(ランダム化時には症状消失)4881例である。発症後12時間以内に全例アスピリンを服用の上、クロピドグレル併用(DAPT)群とプラセボ(単剤)群にランダム化され、90日間二重盲検法で観察された。その結果、DAPT群では単剤群に比べ、90日間脳梗塞再発(2次評価項目)ハザード比(HR)は0.72(95%信頼区間[CI]:0.56-0.92)と有意に低かったものの(5.0% vs. 6.5%)、大出血HRは2.32(95%CI:1.10-4.87)の有意高値だった(0.9% vs. 0.4%)。
今回Kvernland氏らは、試験開始時の画像評価上「梗塞」の有無が、DAPTによる脳梗塞再発リスク低減に影響を与えるかを検討した。解析対象は、画像所見が欠落していた5例を除外した4876例である。
その結果、36.8%に試験開始時、画像上で梗塞が確認された(「梗塞」群)。ただし梗塞の有無を問わず、DAPT群と単剤群の割合は50%ずつだった。
脳梗塞再発リスクを梗塞の有無で分けて比較すると、「梗塞」群における諸因子補正後HRは3.21(2.49-4.14)と有意に高くなっていた。そしてこのような再発高リスクである「梗塞」群では、抗血小板薬「単剤」群に比べ「DAPT」群における脳梗塞再発リスクの有意低下が認められたものの(HR:0.56、95%CI:0.41-0.77)、試験開始時に梗塞を認めなかった群では、有意差はなかった(同1.16、0.74-1.65)。
さらにこの結果を「minor脳梗塞」と「TIA」に分けて解析すると、TIA例では梗塞の有無を問わず、DAPTによる脳梗塞再発リスク低減は観察されなかった。つまり、DAPTによる有意な脳梗塞再発抑制が認められたのは、画像上梗塞を認めた「minor脳梗塞」群のみだった(minor脳梗塞群内のDAPT有無に伴う交互作用P=0.005)。今回の検討対象4876例中、画像上梗塞を認めたminor脳梗塞例は27.4%である。
DAPTが有用となる患者群を特定するために、minor脳梗塞とTIAの診断精度を向上させる必要がある。Kvernland氏はこのように主張した。
本試験は、国立神経疾患・脳卒中研究所から資金提供を受けて実施された。Kvernland氏に開示すべき利益相反はない。