眼瞼痙攣とは眼瞼周囲の筋,主として眼輪筋の間欠性あるいは持続性の過度な収縮により不随意な閉瞼を生じる局所ジストニアと定義される1)。眼瞼がぴくぴくと痙攣する疾患ではなく,瞬目のコントロール異常を考えると理解しやすい。ジストニア症状が目立たない症例も多く,また,羞明や知覚過敏などの感覚異常,精神症状も合併する疾患である。原因は視床,基底核,補足運動野,前部帯状回を含む神経回路内の多因子による伝達異常である。
眼瞼のジストニア症状を訴えて受診する症例は少なく,羞明や違和感,眼精疲労を訴えて受診する症例が多い。また,ドライアイの合併が多く,ドライアイの自覚症状と一致する。
眼所見では説明できない羞明や違和感などを訴える症例や,ドライアイで治療抵抗性の症例は眼瞼痙攣を疑って,瞬目テスト(表)2)を施行して診断する。
根本治療はなく,治療は対症療法となる。症例に応じて下記のような治療を組み合わせて行っていく。
向精神薬や抗うつ薬,睡眠薬により眼瞼痙攣は発症,悪化することがある。薬剤性の場合は,原因薬剤を減量中止することで症状が軽快消失することもあり,原因薬剤を処方した医師と連携して投薬コントロールを行う。また,化学物質曝露が誘因となることもあり,疑われる場合は環境整備を指導する。
ドライアイを合併している場合は,ドライアイ治療を行う。BUT(涙液層破壊時間)短縮型ドライアイが多いため,涙液蒸発予防としてジクアス®点眼液(ジクアホソル)やムコスタ® UD点眼液(レバミピド)を使用していく。
眼輪筋にボツリヌス毒素を注射し,眼周囲の筋力を低下させることで開瞼維持を補助する。ボトックス®注(A型ボツリヌス毒素)を眼周囲の眼輪筋や眉間に筋注する。投与量は1箇所につき1.25~5単位で,効果および副作用を確認しながら弱めの量から投与していく。投与2~3日後から効果が出現し,3~6カ月で効果が消失する。
抑肝散(または抑肝散加陳皮半夏)や抗コリン薬〔アーテン®(トリヘキシフェニジル)〕を処方。ベンゾジアゼピン系薬剤は眼瞼痙攣の増悪因子になるので用いないほうがよい。
クラッチ眼鏡は,ジストニアに対するトリック効果を利用したもので,眼瞼に軽くクラッチ(ワイヤー)をあてることで瞬目コントロールを改善する。また,羞明が強い症例では,遮光レンズ(羞明を自覚する短波長をカットしたレンズ)を使用するとよい。
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