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【一週一話】antimicrobial stewardship(AS)はわが国でどうあるべきか?

No.4693 (2014年04月05日発行) P.55

二木芳人 (昭和大学医学部内科学講座臨床感染症学部門教授)

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-04-07

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  • ASとはantimicrobial stewardship program(ASP)とも呼ばれ,施設内における抗菌薬の適正使用を推進するための組織や方法論を指す言葉と理解してよい。stewardとは,本来執事や管理人を意味する言葉で,家庭内の様々な仕事をこなす人間(執事)や財産あるいは組織を管理する人間のことである。翻って,抗菌薬適正使用にその言葉を当てはめて考えてみると,施設内で抗菌薬の適正使用が確実に行われるように,いろいろと世話を焼く人間や組織ととらえてよいだろう。欧米ではかつて抗菌薬の使用を適正化するために,control(制限)やregulation(規制)という言葉が使われ,強制的な頭ごなしの規制が行われた時代があった。しかし,それによって必ずしも耐性化防止などの有益な効果は得られず,バンコマイシン耐性腸球菌や多剤耐性グラム陰性桿菌の出現,増加をまねいたことは歴史から容易に読み取れる。

    そこで,1990年代に英国を発信地とし,このASPが提唱されるようになった。ASPは,ただ単に抗菌薬の使用規制や届け出制による制約を行うだけではなく,耐性菌サーベイランスや医療経済的な無駄などをデータとして明らかにし,それに基づく症例ごとのディスカッションや教育,啓発を併せて行うことで,より効率的に抗菌薬使用の適正化をめざすものである。そのためには,感染症専門医のみならず感染症治療に習熟した薬剤師や高い感染症診断力を備えた臨床検査技師などでチーム(antimicrobial stewardship team;AST)を構成して活動する必要がある。無論,院内の感染制御チーム(infection control team;ICT)との密接な連携も大切である。わが国でも抗菌薬適正使用のための取り組みは行われてきたが,感染症診療の専門医や専門薬剤師が不足しているため,その方法論として一部薬剤の届け出制や許可制による使用規制を採用せざるをえない施設がほとんどで,これが決して良い結果を生まないことは先に述べた通りである。

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