静岡がんセンターでは,がん患者のニオイ(病臭)の問題に積極的に取り組んでいる。がん患者のニオイの原因として,①尿や便のニオイ(消化管瘻孔やストーマ装具の装着不具合),②ケア不足による体臭や口臭,③皮膚表面のがん自壊創などに伴うニオイ,がある1)。がんに伴うニオイは,がんにおける代謝の変化と皮膚常在菌などの細菌との相互作用により生じると考えられており,がん種や患者により独特のニオイを呈する。ニオイが強いときは,患者だけでなく家族にとっても大きな精神的ストレスとなり,入院生活の質を大きく低下させる。
ニオイ対策では,脱臭機などによる病室の換気とともに,病巣局所の処置が重要である。その具体策として,①洗浄(シャワーなど),②滲出液のドレッシング(吸着剤など),③パウチング,④抗菌薬(メトロニダゾール軟膏やカデックスⓇ軟膏),⑤モーズ氏法,を行っている1)。しかし,それでも十分にニオイをコントロールできないことがあった。そこで,ニオイの原因成分を同定し,発生メカニズムの解明や消臭法の開発などを香料会社と共同で進めてきた。ニオイのある乳癌患者のガーゼからニオイ成分を分析した結果,硫黄化合物,脂肪酸類,芳香族化合物などが検出された2)。これらは悪臭成分として知られており,消臭が難しい成分である。
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