動物咬傷・刺傷では,①創処置,②毒素への対応,③感染対策,の3点に注意して治療を進める。いずれにせよ,重症例では集学的治療を要するため,早期から迅速な対応が必要となる。
どのような動物による咬傷・刺傷であるかを確認する。
有毒(ハブ,マムシ,ヤマカガシなど)か無毒(アオダイショウ,シマヘビなど)により,抗毒素血清投与の必要性を検討する。
ハチ刺傷の既往がある場合には,アナフィラキシーショックの合併に注意する。スズメバチの毒素は多数の生理活性物質からなり,同時多数刺傷の場合はハチ毒自身により初回受傷でもショックに至る。ミツバチの場合は毒囊が残存しているため,針の除去時に毒囊をつままないようにする。
カバキコマチグモでは対症療法のみ,セアカゴケグモでは抗毒素血清が必要となる場合がある。
ネコやイヌではパスツレラ症に対する抗菌薬投与が必要となる。海外でネコ,イヌ,アライグマ,コウモリなどに咬まれた場合には狂犬病の危険性があるため,海外での動物との接触歴が重要となる。
日本ではクマによるものが多く,出血性ショックへの対応が必要となる。
アカエイの尾やミノカサゴの背びれ・胸びれに毒の棘がある。
全身の膨隆疹,紅潮が急激に出現し,呼吸器症状,循環器症状,消化器症状などを伴う。喉頭浮腫による上気道狭窄症状,血圧低下,意識障害を伴うショックを認める場合は重症である。
大型動物による重症咬傷では,血管損傷や気道損傷により出血性ショックや閉塞性ショックに陥る場合もある。
動物咬傷・刺傷の刺口を確認する。
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