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在宅中心静脈栄養法[私の治療]

No.5063 (2021年05月08日発行) P.51

小野沢 滋 (みその生活支援クリニック理事長)

登録日: 2021-05-09

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  • 在宅中心静脈栄養法は通常,消化管が正常に機能しない場合に適応となる。近年,患者,家族の間に胃瘻を忌避する傾向が見られ,胃瘻の造設数の減少が顕著になるにつれて,在宅中心静脈栄養法の指導管理料の算定数が上昇傾向にあるという逆説的な現象が見られているが,合併症の多さ,介護施設利用の著しい抑制がかかることなど,胃瘻の代わりに用いる栄養法としては欠点が多く,また,長年にわたる中心静脈栄養法は合併症として肝不全をきたすことなどから,安易な経腸栄養の代替利用は慎むべきである。
    一方で,短腸症候群,胃瘻造設に伴う重度の逆蠕動,炎症性腸疾患,不可逆的な消化管狭窄などによって経腸栄養が十全に利用できない患者にはきちんと中心静脈栄養法を選択肢として示し,希望があった場合には躊躇せず導入する必要がある。
    また,悪性腫瘍患者の食思不振に対する中心静脈栄養法は近年減少傾向にあると思われるが,いまだに悪液質にあると推測される患者に対して漫然と施行されている症例に遭遇することもある。残念ながら,悪液質に対する中心静脈栄養法は適応外であり,多くの場合,嘔気や浮腫などで患者のQOLを下げていることが多く,きちんと説明した上で,中止するという選択肢を提示すべきであろう。

    ▶治療の実際

    在宅中心静脈栄養患者の多くは,既に紹介元病院で中心静脈栄養法を開始されている症例がほとんどである。在宅では紹介元で施行されている投与法を踏襲することになる。

    【投与ルート】
    〈完全皮下埋め込み型中心静脈ポート(CVポート)〉

    現在最も多く用いられている投与方法で,数カ月以上の長期間の在宅中心静脈栄養法を行う場合に用いられる。通常,前胸部にセプタムと呼ばれるシリコンゴムなどでできた刺入部を持つポートを埋め込んで,そこに特殊な針(ヒューバー針)を用いて刺入することで栄養剤を注入する。

    セプタムはゴム製のため,通常の注射針を用いると刺入時に針による穴が開いてしまう。そのため薬液の注入には,先端の注射穴が横についている,特殊な針(ヒューバー針)を用いる。刺入時には,①清潔操作を徹底すること,②同じ場所を刺さないこと,③必ずヒューバー針を用いること,に気をつける。介護力が乏しい在宅医療の環境ではヒューバー針を数日程度刺入したままにすることも多く,滅菌手袋を使用した上で清潔操作には特に気をつける必要がある。埋め込み型ポートは本来は毎日一定時間輸液後(たとえば夜間のみ注入)に抜去するという使い方のためのものであり,持続投与を行うのであれば,皮下トンネル型カテーテルのほうが適している。

    〈PICCカテーテル〉

    PICC(末梢静脈挿入式中心静脈)カテーテルは通常,上腕静脈から上大静脈に挿入し,1~3カ月程度の中心静脈留置に用いる。ルート交換時に清潔操作を行うことはCVポートと同様である。感染に対しては通常の中心静脈カテーテルよりも強いと言われているが,長期留置には向かず,通常は定期的に入れ替える必要があるが,透視下での入れ替えが必要であり,在宅での入れ替えは困難である。

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