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無菌性髄膜炎[私の治療]

No.5066 (2021年05月29日発行) P.47

寺嶋 宙 (東京大学大学院医学系研究科)

登録日: 2021-06-01

最終更新日: 2021-05-25

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  • 発熱,頭痛,嘔吐などの症状があり,髄膜刺激徴候が存在し,髄液検査で炎症所見を認めるが塗抹染色標本や一般細菌培養で病原体を認めない症候群である。原因の70~80%をエンテロウイルスが占め,夏~秋に流行する。その場合の予後は良好であり,対症療法が中心となる。他の原因としてムンプスウイルスやマイコプラズマ,不完全に治療された細菌性髄膜炎,結核菌,真菌,髄膜近傍での感染症,悪性腫瘍,自己免疫疾患,川崎病,ガンマグロブリン経静脈投与の副作用などが挙げられ,原因により対応が異なる。

    ▶診断のポイント

    発熱,頭痛,嘔気・嘔吐,羞明といった症状から疑う。乳幼児では不機嫌,易刺激性,傾眠をよく認める。項部硬直やKernig徴候などの髄膜刺激徴候を認めることが多い。髄液所見では細胞数増加,蛋白軽度上昇を認め,糖は通常正常範囲内である。鑑別診断で大事なのは,不完全に治療された細菌性髄膜炎や結核性髄膜炎であり,経口抗菌薬の使用歴や亜急性の経過,髄液糖(/血糖)の低下などから疑う。

    そのほか手足や口腔内の発疹を認めればエンテロウイルスを,耳下腺の腫脹があればムンプスウイルスを,先行する肺炎があればマイコプラズマを疑うといったように,合併する症状が鑑別診断に役立つ。意識障害や巣症状を認めるなど脳病変を疑う場合は,必要な治療を優先させた上で,頭部(造影)CTやMRIなどの画像検査を適宜行う。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    症状や流行からエンテロウイルスによる無菌性髄膜炎が疑われる場合,軽症例(頭痛が軽く,意識障害がなく,経口摂取可能)であれば髄液検査は必要なく,解熱鎮痛薬を処方して外来経過観察とする。重症例(動けないほど強い頭痛,意識障害,経口摂取不良のいずれか1つでも認める)は入院とし,髄液検査を行った上で,安静,輸液,解熱鎮痛薬などによる対症療法を行う。

    細菌性髄膜炎が否定できない場合は,髄液の培養検査や抗原検査を提出した上で,経験的な抗菌薬治療を開始する。結核性髄膜炎,真菌性髄膜炎,悪性腫瘍,自己免疫疾患(急性散在性脳脊髄炎の一症状である場合を含む),川崎病などの場合はそれぞれの疾患特異的な治療を行う(本稿では割愛)。

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