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急性リンパ性白血病(ALL)[私の治療]

No.5070 (2021年06月26日発行) P.41

八田善弘 (日本大学医学部内科学系血液膠原病内科教授)

登録日: 2021-06-26

最終更新日: 2021-06-23

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  • 急性リンパ性白血病(ALL)は,フィラデルフィア(Ph)染色体陽性と陰性にわけられる。Ph染色体は,9番と22番の染色体の相互転座により形成される染色体で,それにより形成される融合遺伝子BCR-ABL1の強いチロシンキナーゼ活性のために,下流にシグナルが伝達されてALLを発症する。治療は,チロシンキナーゼ阻害薬が有効である。Ph染色体陰性ALLは,分子標的薬が存在しないため化学療法を行う。

    ▶診断のポイント

    貧血,血小板減少やDICによる出血,感染症,腫瘍熱が主訴となるが,健康診断や他疾患の採血で見つかる無症状例もある。通常は,白血病細胞(芽球細胞)がペルオキシダーゼ染色で陰性であれば,ALLである。急性骨髄性白血病(AML)は,ペルオキシダーゼ染色で陽性になる。フローサイトメトリーによる細胞表面マーカーでT細胞性白血病,B細胞性白血病の鑑別を行う。染色体分析を行いPh染色体陽性,陰性の診断をする。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    入院にて化学療法を行う。多くは病型が確定しないうちに緊急で治療が必要となるので,確定診断を待ちつつ約1週間のステロイド治療で腫瘍量の減少を図る。病型確定後は寛解導入療法,さらに寛解例には地固め療法を行う。その後,外来にて約2年の維持療法を行う。中枢神経再発が多いので,寛解導入時から抗腫瘍薬の髄注を併用する。思春期および若年成人には小児科で用いられている化学療法(小児型レジメン)の有用性が示されており,小児型レジメンまたはその変法で治療する1)。小児型レジメンではメトトレキサート(MTX)大量療法が含まれているが,25歳以上の症例でもMTX大量療法の有効性が証明されており,MTX大量療法を含んだ化学療法が推奨される1)2)

    Ph染色体陽性ALLの場合は,寛解導入療法,地固め療法,維持療法のすべてにチロシンキナーゼ阻害薬であるスプリセル®(ダサチニブ)を併用する。可能であれば同種造血幹細胞移植を行う。Ph染色体陰性ALLは,化学療法の進歩に伴い治療成績が向上しており,一部のハイリスク症例は同種造血幹細胞移植の適応であるが,適応は明確になっていない。

    B細胞性ALLの再発例には,抗CD22抗体に抗腫瘍薬オゾガマイシンを結合させたベスポンサ®(イノツズマブ オゾガマイシン),抗CD19二重特異性T細胞誘導抗体ビーリンサイト®(ブリナツモマブ)が従来の化学療法より寛解率が高い1)。T細胞性ALLには特異的治療がないので,再発例には多剤併用化学療法で再寛解導入を行う。B細胞性でもT細胞性でも,再寛解に入れば可能な限り同種造血幹細胞移植を行う。

    【治療上の一般的注意】

    初診時は腫瘍細胞が多く,腫瘍崩壊症候群を生じることがある。また,重症例では腎不全,心不全に至ることがあるので,特に白血球数の多い症例では十分な補液や尿酸分解酵素薬であるラスリテック®(ラスプリカーゼ)の投与を行う。化学療法中は好中球が著減するため,クリーンルームやクリーンベッドを使用する。

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