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川崎病[私の治療]

No.5070 (2021年06月26日発行) P.48

小林 徹 (国立成育医療研究センターデータサイエンス部門部門長)

登録日: 2021-06-29

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  • 川崎病は4歳以下の乳幼児に好発する,原因不明の血管炎症候群である。現在年間約1万8000人が新たに発症している。無治療では25%に冠動脈病変を合併し,心臓突然死の原因となる。

    ▶診断のポイント

    「川崎病診断の手引き 改訂第6版」1)に沿って,①発熱,②両眼球結膜充血,③口唇口腔所見(口唇の紅潮,いちご舌など),④発疹(BCG接種痕の発赤を含む),⑤四肢末端の変化(急性期は手足の硬性浮腫,手掌足底または指趾先端の紅斑,回復期は指先からの膜様落屑),⑥非化膿性頸部リンパ節腫脹,の6症状のうち5症状以上を認めたものを川崎病と診断する。4主要症状しか認められなくても,他の疾患が否定され,経過中に断層心エコー法で冠動脈病変(内径のZスコア+2.5以上)を呈する場合は,川崎病と診断する。主要症状数が不足していても,他の疾患が否定され参考条項から川崎病が最も考えられる場合は,不全型川崎病と診断する。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    血管炎の結果として生じる冠動脈瘤形成が最大の問題であり,より早期に血管炎を終息させることが急性期治療最大の目的であると「川崎病急性期治療のガイドライン」2)に記されている。急性期治療として最も信頼が高い治療法は,免疫グロブリン2g/kgによる超大量療法(IVIG)とアスピリンの併用である。IVIGによって,冠動脈瘤合併割合は現在2%程度まで低下した。しかし,IVIGにて症状が改善しないIVIG不応例が問題となっている。2006年にIVIG不応例を治療開始前に予測するリスクスコアが開発された(表)。

    リスクスコア5点以上をIVIG不応予測例と定義すると,感度・特異度ともに8割程度の精度で予測可能である。リスクスコアを用いたIVIG不応予測例に対しては,プレドニゾロンやシクロスポリンをIVIGと併用する初期強化療法を考慮する。初期治療開始後48時間以内に解熱しない患者に対しては,追加の抗炎症療法を行う。ガイドラインにはIVIG再投与,メチルプレドニゾロンパルス,プレドニゾロン,インフリキシマブ,シクロスポリン,血漿交換等が記載されており,解熱効果や炎症マーカーの推移等を参考にして遅滞なく抗炎症療法を追加することが肝心である。

    また,冠動脈瘤形成以外にも心筋炎や脳炎,麻痺性イレウス等の多彩な合併症を呈するため,それぞれの病態に合わせた治療も重要である。過剰輸液は,血圧上昇によって冠動脈瘤形成リスクが増大することが危惧されるため,避けるべきである。

    冠動脈病変非合併例では,アスピリンを3カ月程度継続する。冠動脈病変合併例は,アスピリン投与を冠動脈内径が正常化するまで継続する。巨大冠動脈瘤(Zスコア10以上または実測値8mm以上)合併例では,高率に心血管イベントを発生するため,抗凝固療法を追加する。

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