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ベーチェット病診療ガイドライン2020[ガイドライン ココだけおさえる]

No.5071 (2021年07月03日発行) P.28

竹内正樹 (横浜市立大学大学院医学研究科眼科学)

岳野光洋 (日本医科大学大学院医学研究科アレルギー膠原病内科学分野准教授)

水木信久 (横浜市立大学大学院医学研究科眼科学教授)

登録日: 2021-07-05

最終更新日: 2021-06-30

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  • 主な改訂ポイント〜どこが変わったか

    1 ベーチェット病診療に必要な情報を網羅した診療ガイドラインが策定された
    2 小児ベーチェット病分科会を立ち上げ,小児ベーチェット病および移行期医療について指針を示した
    3 TNF阻害薬の適応が拡大され,インフリキシマブは難治性ぶどう膜炎,特殊型病変に,またアダリムマブは,腸管病変,既存治療で効果不十分な中間部・後部ぶどう膜炎に投与が可能となった
    4 2019年9月に,ホスホジエステラーゼ4阻害薬であるアプレミラストについて,局所療法で効果不十分な口腔潰瘍に対して保険適用が承認された
    5 NUDT15 R139Cホモ接合体では,チオプリン製剤による急性骨髄抑制と脱毛の副作用が必発するため投与開始前に遺伝子多型検査を行い,ホモ接合体であれば投与を回避する

    総論

    ベーチェット病は全身の諸臓器に発作と寛解を繰り返す原因不明の炎症性疾患である。わが国では1973(昭和48)年に特定疾患(現在の指定難病)に定められ,2014(平成26)年の指定難病の医療費受給者は2万35人となっている。口腔内潰瘍,ぶどう膜炎,皮膚症状,外陰部潰瘍を4主症状とし,副症状として関節炎,腸管病変,精巣上体炎,血管炎,中枢神経病変がみられる。

    2019(平成31)年12月に日本ベーチェット病学会監修,難治性疾患政策研究事業ベーチェット病に関する調査研究班ならびに難治性炎症性腸管障害に関する調査研究班編集のもと「ベーチェット病診療ガイドライン2020」が出版された。

    本ガイドラインでは,ベーチェット病診療で臨床上重要度の高い事項についてクリニカルクエスチョン(clinical question:CQ)を作成し,臨床実態調査および文献的な科学的根拠の検索を行い,エビデンスレベルを決定した。しかし,希少疾患であるベーチェット病では患者数や炎症による組織障害の不可逆性などの観点から,ランダム化比較試験や前向きコホート研究などの臨床試験が困難であり,エビデンスレベルの高い科学的根拠が十分得られているとは言えない。そこで本ガイドラインでは,各CQの推奨に対する同意度をベーチェット病の専門医師のvoting(投票)によって求め,エビデンスレベルを補うこととした。科学的根拠であるエビデンスレベルと実臨床に則した専門医の同意度の両者から,最終的な推奨度を決定している。

    1 All in oneのガイドラインである

    なぜ変わったか

    ベーチェット病の炎症は全身の諸臓器に及ぶため実臨床では1人の患者に複数の診療科が関わることが多く,担当医は専門領域外の病変の病態,治療についても熟知することが望ましい。これまで病変ごとにガイドラインが策定されてきたため,専門外の領域まで十分な知識を得るのは困難であった。そこで,本ガイドラインの作成にあたっては,ベーチェット病に携わるすべての医療従事者が診療で必要となる実用的な情報を統括した,All in oneの診療ガイドラインを策定することをコンセプトとした。

    実臨床での対応

    本ガイドラインでは,ベーチェット病の疾患概念,病因・病態,臨床像,治療アルゴリズム,CQ,ベーチェット病患者会情報など診療に関わる多種多様な項目を網羅している。CQは9領域から計150にのぼり,各CQに実践的な推奨文を提示し,エビデンスレベル,専門医の同意度,それらから導き出された推奨度を示している。病変ごとに作成した診断・治療アルゴリズムは明快かつ実践的であり,わが国のベーチェット病診療の均てん化に大きく貢献するものである。

    2 小児ベーチェット病・移行期医療

    なぜ変わったか

    本ガイドライン作成に当たり,小児分科会を組織し小児ベーチェット病と移行期医療のCQを設定した。わが国のベーチェット病患者の5.4~7.6%は小児期発症と推定される1)。2012(平成24)年に日本小児リウマチ学会が実施したアンケート調査によると小児発症ベーチェット病患者のうち厚生労働省ベーチェット病診断基準を満たした症例は完全型が2%,不全型58%の計60%にとどまり,残りの40%は疑いに分類された2)。その要因として小児では皮膚症状,眼症状,外陰部潰瘍の主症状の頻度が成人に比べて低いことが指摘されている。小児発症患者の予後は死亡率2%,治療の必要のない完全寛解は4%であり,多くは長期間にわたる治療が必要で,小児期から成人期への移行医療の整備が重要となる3)

    実臨床での対応

    小児ベーチェット病の診断には厚生労働省ベーチェット病診断基準(2016年小改訂)を参考に診断するが,小児例では基準を満たしづらい傾向があることに留意する(推奨度B)。治療指針は成人とほぼ同様で,治療薬もほぼ使用可能であるが,治療薬の選択に際しては小児リウマチ専門医などとの医療連携のもとで行うことを提案する(推奨度A)。小児ベーチェット病患者の成人以降については,患者の自己支持,自立した医療行動,性的健康,心理的支援,教育的・職業的計画,健康とライフスタイルの6つの目標(表1)3)を達成する必要があり,多職種が移行支援に関わっていくことが推奨される(推奨度B)。

      

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