編著: | 岩波慶一(東京ベイ・浦安市川医療センター膠原病内科医長) |
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判型: | B5判 |
頁数: | 210頁 |
装丁: | カラー |
発行日: | 2019年08月25日 |
ISBN: | 978-4-7849-6663-9 |
付録: | 無料の電子版(HTML版)が付属(巻末のシリアルコードを登録すると、本書の全ページを閲覧できます) |
第1章 ステロイド治療の基礎知識
第2章 疾患別のステロイドの使い方
第3章 クリニカルクエスチョン
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第1章 ステロイド治療の基礎知識
1 免疫学,薬理学から考える免疫疾患の治療戦略
2 ステロイドの副作用と対策―投与前に想定すべきこと
第2章 疾患別のステロイドの使い方
1 関節リウマチ
2 全身性エリテマトーデス(SLE)
3 リウマチ性多発筋痛症
4 成人発症Still病
5 巨細胞性動脈炎/高安動脈炎
6 顕微鏡的多発血管炎/多発血管炎性肉芽腫症
7 好酸球性多発血管炎性肉芽腫症
8 IgA血管炎
9 ベーチェット病
10 炎症性腸疾患
11 特発性間質性肺炎
12 ネフローゼ症候群
13 IgA腎症
14 視神経脊髄炎
15 特発性血小板減少性紫斑病
16 自己免疫性溶血性貧血
17 ショック
18 アトピー性皮膚炎
19 アレルギー性結膜炎
第3章 クリニカルクエスチョン
1 ステロイドカバーの方法は?
2 妊婦・授乳婦への投与法は?
3 薬剤相互作用はあるの?
4 ワクチン接種はできるの?
巻頭言
科学は事実と理論を一致させる作業です。理論が事実から乖離した反省から生まれたのがevidence-based medicine(EBM)です。EBMでは事実に近似するものとしてエビデンスを重視します。
EBMが浸透するにつれ「エビデンス」という言葉が一人歩きを始め,「エビデンス」は「EBM」と同義であると誤謬を犯す人が増えてきました。EBMにおいて「エビデンス」は統計学的根拠にすぎません。EBMとは,「エビデンス」だけでなく「患者の病状と周囲を取り巻く環境」「患者の価値観」「医療者の臨床的経験」を含めて総合的に判断する医療です。「エビデンス」が不足していてもEBMは実践できます。
ステロイド治療では,ほとんどの疾患において質の高いエビデンスは存在しません。それでもEBMを実践する医療者は,患者を治療するためにステロイドを開始しなければいけません。同様に,ステロイドの減量法に関してもエビデンスは存在しませんが,減量して中止することをめざさなければいけません。統計学的根拠が不足していても,細かい事象の積み重ねからステロイドが有効であること,そして有害であることは事実であると導き出せるからです。
「エビデンス」の有無を意識しながら,病態生理学,免疫学,内分泌学,薬理学などの知識をふまえて「医療者の臨床的経験」から各専門家がステロイドの解説をしたのが本著です。
この本は,「ステロイドは減らせない」と言われて副作用に苦しむ患者を脳裏に浮かべながら,在野の編者がまとめた従来型治療へのアンチテーゼでもあります。一人ひとりの読者に批判的吟味を行ってもらい,止揚(アウフヘーベン)して,より質の高いEBMを実践してもらうのが本企画の最終的な目的でもあります。
最後に,本企画に理解を示し執筆を快諾して下さった先生方および立案・編集をして下さった日本医事新報社の方々に深謝申し上げて,編者の筆を置きたいと思います。
東京ベイ・浦安市川医療センター膠原病内科医長 岩波慶一