編著: | 陶山恭博(JR東京総合病院リウマチ・膠原病科) |
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編著: | 須田万勢(諏訪中央病院リウマチ膠原病内科) |
編著: | 福井 翔(聖路加国際病院リウマチ膠原病センター) |
判型: | B5判 |
頁数: | 200頁 |
装丁: | カラー |
発行日: | 2021年10月25日 |
ISBN: | 978-4-7849-6676-9 |
付録: | 無料の電子版(HTML版)が付属(巻末のシリアルコードを登録すると、本書の全ページを閲覧できます) |
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第1章 膠原病ですか?
1 レイノー現象のお仲間は?
2 膠原病に伴うTMA(血栓性微小血管障害症)?
3 その痛みは本当に関節痛ですか?
4 血液培養陰性のその先へ
5 内科疾患に潜む睾丸痛
6 灯台下暗し
7 英語名での検索も
8 帯状疱疹後の脱力にご注意
9 霜焼けにご注意
10 蕁麻疹は蕁麻疹でも……
11 高齢者でも除外できません
第2章 SLEですか?
12 SLEの皮膚所見はいろいろあるけれどどのタイプ?
13 オンリー腎でも考えて
14 必ずしも純粋なSLEの増悪とは限らない
15 爪痕にご注意
第3章 血管炎ですか?
16 肺胞出血といえば膠原病ですよね?
17 「血管壁の肥厚=血管炎」とは限らない
18 ルーチンはルーチンに
19 膠原病ミミック西の横綱
20 肺の空洞病変を見たら
21 好中球減少後の発熱は膠原病?
22 PACNSですか?
23 外耳道炎はチョロくない
24 ニキビにご注意
25 血圧が高すぎて測れない
26 ヒントは細部に宿る
27 原因不明の肩関節痛です
28 クリオでもクリオグロブリンとは限らない
29 下腿潰瘍はどうしましょう?
第4章 Behçet病ですか?
30 陰部潰瘍=Behçet病ですか?
31 「陰部潰瘍+口内炎」でもBehçet病とは限らない?
32 無菌性髄膜炎のピットフォール
33 フォリアミン®はセット処方が基本です
34 大腿骨頭だけじゃない
第5章 関節リウマチですか?
35 ゲシュタルトから外れた関節炎
36 膠原病ミミックハンターの登竜門
37 関節裂隙は「狭くなる」だけじゃない!?
38 第3の結晶誘発性関節炎は?
39 難治性片側手関節炎だけが残存する「関節リウマチ」どうしましょう?
40 ウイルス性で終わらせない!
41 日本でも、あるんです!
42 ばち指と筋骨格症状の背景には……
43 可能性は残しておこう
第6章 成人スティル病ですか?
44 BC以外も大事です
45 成人スティル病のフレアでしょうか?
46 喉が痛いでは“喉”にこだわろう
第7章 その他
47 膠原病ミミック東の横綱
48 それは子宮筋腫のせいかも!
49 シェーグレン症候群の「口の渇き」を見つめ直す
50 ステロイドは中止するまでが大事です
巻頭言
先日,“Who is the great Rheumatologist?”という記事を読みました。筆者は米国のJohn J. Cush先生,ハリソンの“The evaluation of the musculoskeletal complaint”を1987年からずっと書いている偉大なRheumatologistです。彼は“偉大なる医師”を次のように定義していました。
“The greatest rheumatologist I know may be the next trainee with whom I work. I hope to help nurture his or her enthusiasm for our fascinating field, guide a lifelong pursuit of learning, and provide the education and circumstances for this new rheumatologist to deliver exceptional care for many decades.”
自分が接する次世代こそが”Great”だと言うのです。医学(Rheumatology)という魅力的な分野への熱意を育むことが優れた治療の提供につながるという,教育とその環境設定を重視するDr. Cushならではの視点に身が震えました。
Rheumatologyは古き良き内科です。採血や画像,病理などの検査だけでは診断できません。病歴と身体診察がより重視される,人間らしさが残る分野です。カンファレンスでは,「何かが変だよね?」という言葉をきっかけに,診断にたどり着いていきます。今回は,この“何かが変を大切に”をモットーに,診断に至るRheumatologistの思考の言語化を目指しました。そこにあるアナログな部分の魅力が,読者の方々の学びスイッチに繋がると,非常に嬉しく存じます。
題材は,この10年間で「膠原病ですか?」とコンサルトを頂いたケースから,選りすぐりの50選としました。ほぼ“膠原病関連疾患じゃなかった”ケースです。Rheumatologyとのfuzzyな疾患にこそ,柔軟な思考が求められます。やはり,“膠原病の診断は感染症の除外から”といっても過言ではありませんので,感染症は最大グループを占めて14ケースあります。「血液培養が陰性の場合にどうするか?」「培養が生えない/生えにくいケースではどう当たりをつけていくか?」「万が一膠原病だったらどうか?」などの臨床のリアルがそこにあります。
非常に悩み・学びが大きかった50選です。その私達の経験が“内科力”として継がれていくことを心から願っています。末筆になりましたが,私達執筆陣に愛情を注いで教育してくださった諸先輩方,未曾有のコロナ禍にも関わらずお時間を分けて頂いたRheumatologyの仲間の皆様,そしてサポート頂いた日本医事新報の編集部の方々に,改めて御礼申し上げます。
2021年9月
JR東京総合病院リウマチ・膠原病科 陶山恭博
下記の箇所に誤りがございました。謹んでお詫びし訂正いたします。
・ 25ページ
No.8「帯状疱疹後の脱力にご注意」
◆コンサルト文2行目
<誤>「皮疹を認めた右大腿部ならびに臀部の帯状疱疹後神経痛が残存しており,鎮痛薬で対応しておりましたところ,突然の右下腿のdrop footをきたしました。」
<正>「皮疹を認めた左大腿部ならびに臀部の帯状疱疹後神経痛が残存しており,鎮痛薬で対応しておりましたところ,突然の左下腿のdrop footをきたしました。」
・ 26ページ
No.8「帯状疱疹後の脱力にご注意」
◆2)診断プロセス
<誤>「服を脱いでもらい確認したところ,帯状疱疹の痕は臀部ならびに右下肢にあり,散布疹を伴う播種性帯状疱疹だったことを確認した。時間経過を確認し,帯状疱疹の内服治療を終えた2週間後に,疼痛がつらい左下肢の同側に運動麻痺をきたしているという病歴を聴取した。」
<正>「服を脱いで頂き確認したところ,帯状疱疹の痕は左臀部(L1,2,3)ならびに左下肢と足背にあり(L5),散布疹を伴う播種性帯状疱疹だったことを確認した。時間経過を確認し,帯状疱疹の内服治療を終えた2週間後に,疼痛がつらい同側の左下肢に運動麻痺をきたしているという病歴を聴取した。診察をすると,左下肢は股屈曲と膝伸展時の筋力低下,下垂足をきたしていた。」