「コロナ禍の今,開業を考えているのですが,見合わせたほうがよいでしょうか?」
開業について,私のところにはこんな相談が数多く寄せられます。今回は,「コロナ禍の今だからこそ,開業のチャンスがある」ということと,開業を検討する際の,主に融資を受けるときの留意点についてお話しします。
厚生労働省の「令和元(2019)年医療施設(動態)調査・病院報告の概況」1)によると,2019年10月1日時点で,全国の医療施設は17万9416施設と,前年に比べ326施設増加しています。
内容を見ていくと,「病院」は8300施設で,前年に比べ72施設減少。「一般診療所」は,10万2616施設で511施設増加ですが,これは無床一般診療所の増加によるもので,有床一般診療所は減少傾向にあります(図1)。このことから,より小さな医院やクリニックが増えていることになります。
これ以降のデータはまだ公表されていませんが,コロナ禍によって医院やクリニックの開業が抑えられている印象はあります。
現在,多くの先生が,コロナ禍が収束しないため,開業については慎重な姿勢を示しています。しかし,私の個人的な意見にはなりますが,しっかりとリスクとチャンスを天秤にかけることで,このような状況下でも開業の可能性は十分にあると考えています。
その理由を,「物件」「資金調達」「スタッフ採用」の3つの観点からご説明します。
医院・クリニックの経営がうまくいくかどうか,これに大きく影響するのが“物件”,そしてその“立地”です。
駅近くのテナントなどは人気が高いため空きが出ず,また新しくビルを建築するにしても水面下での募集が多かったため,なかなか表に出なかった,という事情がありました。さらに,コロナ感染拡大防止のため,わが国でも緊急事態宣言が発出され,土地のオーナーがビルの建築を控えていました。したがって,開業に適した,立地の良い物件がなかなか出てこなかったという傾向が,今まではありました。
しかしコロナ禍が長引き,“withコロナ時代”として「今後どうしていくか」を考えなければならなくなった現在では,この流れが変わってきています。
現在は,優良物件を手に入れるチャンスが増加していると言えるでしょう。