睡眠障害は現代病であり,特に日本は「24時間社会」「ストレス社会」と言われ,大人から子どもまで人々の生活は夜型化しており,5人に1人の割合で睡眠の問題を抱えていると言われている。睡眠障害は不眠症,ナルコレプシー(過眠症),概日リズム睡眠障害(睡眠・覚醒スケジュールの異常),睡眠時随伴症(睡眠中に起こる異常行動),睡眠関連運動障害(睡眠と関連した異常感覚や不随意運動),睡眠関連呼吸障害(睡眠中の呼吸停止)に大別される。なお,ナルコレプシーについては別稿で解説する。
問診,質問票(自覚症状に関する質問とベッドパートナーに対する質問からなる「ピッツバーグ睡眠質問票」や日中の眠気の自覚的評価を行う「エプワース眠気尺度」),睡眠日誌,日中の眠気を客観的に評価する反復睡眠潜時検査(MSLT),夜間の睡眠を客観的に評価する終夜睡眠ポリグラフィー(PSG)などを行い,鑑別診断を行う。
まずは生活習慣や睡眠環境の是正などの睡眠衛生指導を行う。また,不眠症状の発症・持続に関連する認知・行動・感情の問題を変容させる認知行動療法を行う。これらの非薬物療法とともに薬物療法を併用する。薬物療法は不眠の臨床症状に基づいて選択する(後述)。
肥満に伴って発症・増悪している場合には減量を指導する。軽症例では側臥位で眠る習慣をつけたり,寝酒を禁止することで効果が期待できる。以上のような生活指導を行いながら,口腔内装置治療や在宅持続陽圧呼吸療法(CPAP)を行う。
症状を増悪する因子の排除や症状を軽減させる以下のような措置を講じる。
①カフェイン,ニコチン,アルコールなどの嗜好品を避ける。
②抗うつ薬,ドパミン拮抗薬,抗ヒスタミン薬,抗精神病薬,リチウムなどの薬物を中止する。
③入浴・シャワー,マッサージ,湿布,歩行(ウォーキング),下半身の運動などを行う。
④血清フェリチン値が50mg/mL以下のときは経口鉄剤を内服する。
⑤薬物療法。
寝室の障害物を片づける,ベッドの使用を中止しマットなどを利用してより低い位置に寝るようにするなど寝室環境の改善を試みて,患者自身の外傷や暴力的行動による同室家族(配偶者など)に対する傷害を最低限にするなどの環境調整を行う。また,原因となる薬物(リチウム,三環系抗うつ薬,抗精神病薬など)の使用を中止する。その上で薬物療法を行う。
規則正しい生活を心がけ,生活習慣を崩さないように睡眠衛生指導を行う。時間療法,高照度光療法,薬物療法を行う。
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