MALTリンパ腫(mucosa associated lymphoid tissue lymphoma)は,辺縁帯リンパ腫の一種である。辺縁帯リンパ腫は,節外性辺縁帯リンパ腫,節性辺縁帯リンパ腫,脾辺縁帯リンパ腫,の3つに分類され,MALTリンパ腫は節外性辺縁帯リンパ腫と同義である。節外臓器としては胃,消化管,肺,甲状腺,乳腺,眼科領域などに発生し,頻度は全世界の8施設の症例の集計では全リンパ腫の7.6%,国内の地域ベースの疫学研究では9.1%であった。
一部のMALTリンパ腫では,感染症,自己免疫疾患が病因と考えられている。わが国の胃MALTリンパ腫ではHelicobacter pylori(以下,H. pylori)が90%陽性であり,唾液腺ではシェグーレン症候群,甲状腺では橋本病との関連が指摘されている。
小型B細胞がシート状にマントル帯にリンパ腫が増殖している。リンパ腫細胞が上皮に浸潤するリンパ上皮性病変,形質細胞への分化,リンパ腫細胞の胚中心へ浸潤による結節性病変が認められることがある。細胞免疫形質はCD20+,CD79a+,CD5-,CD10-である。
MALTリンパ腫の治療方針は発生部位により異なり,胃MALTリンパ腫と胃以外のMALTリンパ腫にわけて検討される。
胃MALTリンパ腫の場合,H. pylori陽性であれば除菌,H. pylori陰性であれば放射線療法が基本となる。胃以外のMALTリンパ腫では,限局期の場合は外科切除,放射線療法,無治療経過観察が選択肢となる。進行期の場合,進行期濾胞性リンパ腫に準じた治療方針が選択される。低腫瘍量(腫瘍量が少なく,腫瘍に関連した臨床症状が認められない場合)では無治療経過観察あるいはリツキシマブ単剤が,高腫瘍量(腫瘍量が多い,腫瘍に関連した臨床症状が認められる,あるいは今後認められる可能性が高い場合)ではリツキシマブ併用化学療法が選択肢となる。
胃MALTリンパ腫の診療では,H. pylori感染の判定が重要である。除菌判定は複数の診断法を用い厳密に行う。除菌治療後,偽陰性の可能性があるため,経過観察,再検査が望ましい。
MALTリンパ腫は,臨床経過が緩徐で予後が良好なため,化学療法介入後も治療が過剰とならないよう,常に配慮しなければならない。
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