【漫然としたG-CSF投与は避けるべき】
慢性好中球減少症は,慢性的(通常は3カ月以上)に好中球減少(1500/μL未満)がみられる状態である。成人の慢性好中球減少症については2018年に診療の参照ガイドが発表されている。
成人慢性好中球減少症の重症度分類では好中球数1000/μL以上・1500/μL未満を軽症,500/μL以上・1000/μL未満を中等症,500/μL未満を重症としている。ただし,好中球数には人種差があることが知られており,アジア人は白人よりも好中球数が1500/μL未満となる頻度が高い可能性がある。したがって,特に軽症例では,臨床経過等もあわせて病的意義について判断することが求められる。
成人慢性好中球減少症の病型は,自己免疫性,T細胞クローンを伴うもの,慢性特発性等に分類される1)。先天性好中球減少症ではelastase, neutrophil expressed(ELANE)遺伝子をはじめとして,16種の遺伝子の異常が知られている2)。
中等症までの慢性好中球減少症では,臨床上問題となるような感染症はほとんどみられない。重症例では重篤な感染症が問題となり,感染症発症時には適切な抗菌薬投与と好中球数増加のための顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)投与が行われる。ただし,先天性ではG-CSFの投与量が多い症例を中心に急性骨髄性白血病の発症率が高く,他の病型でも感染症のない状態での漫然としたG-CSF投与は避けるべきである。
【文献】
1)横山泰久, 他:臨血. 2018;59(7):845-57.
2)Picard C, et al:J Clin Immunol. 2018;38(1):96-128.
【解説】
横山泰久 筑波大学医学医療系血液内科講師