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びまん性大細胞型B細胞リンパ腫[私の治療]

No.5081 (2021年09月11日発行) P.38

山本一仁 (愛知県がんセンター血液・細胞療法部部長)

登録日: 2021-09-13

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  • びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(diffuse large B-cell lymphoma:DLBCL)は,月単位で進行する中悪性度リンパ腫の代表的病型である。最も頻度の高い病型であり,全リンパ腫の40%ほどを占める。DLBCLは,病理形態学的特性(細胞形態,表面形質),生物学的特性,臨床病態,治療反応,予後において多彩な病型を含んでいる。診断は病変部位の生検により確定するが,病変はリンパ節のみならず,節外にも発生する。標準治療であるR-CHOP(リツキシマブ, シクロホスファミド, ドキソルビシン, ビンクリスチン, プレドニゾロン)療法により70%ほどの長期生存が得られている。再発すると予後は不良である。

    ▶診断のポイント

    診断は病変部位(腫大リンパ節または節外の腫瘤)の生検により確定する。病理診断は,WHO分類に基づいて行われる。診断には,免疫染色を含めた病理組織学的診断に加えて,フローサイトメトリーによる表面マーカー検索,遺伝子検査などを行うことが必要である。したがって,採取した生検材料は通常のホルマリン固定のみならず,生標本として処理することが必須である。これらの検索を行うためには,十分な生検材料を得る必要があり,少なくとも初発時には切開生検を行うことが望ましい。治療方針を決定する上で病理診断が最も重要であり,可能な限り血液病理医による診断が望まれる。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    治療方針の決定には,病理診断に加えて,病期診断,合併症の評価,リスク群の把握が必須である。身体所見,血液・生化学検査,全身CT(頸部−鼠径部),骨髄穿刺/生検,上部消化管内視鏡検査,全身FDG-PET(/CT)により病期を決定する。必要に応じて,MRIや下部消化管検査を実施する。合併症の評価として,心電図,心エコー,血液ガス分析・血中酸素飽和度,肝炎ウイルス検査などの臓器機能検査を行う。全身状態の指標であるperformance status(PS)の把握は重要である。リスク因子については,国際予後指標(international prognostic index:IPI)に基づき,年齢(61歳以上),血清LDH(正常上限を超える),PS(2以上),病期(Ⅲ期,Ⅳ期),節外病変数(2個以上)の5因子中の予後不良因子の個数により,low risk(0~1個),low-intermediate risk(2個),high-intermediate risk(3個),high risk(4~5個)の4つのリスク群に分類する。

    DLBCLに対する標準治療はR-CHOP療法であり,これを中心に治療を組み立てる。

    未治療例に関しては,限局期〔Ⅰ期と腫瘤径が10cm以下(non-bulky)で一照射野内に病変がとどまる連続的Ⅱ期(non-bulky, contiguous stage Ⅱ)〕の場合,R-CHOP療法3コース後に病変部位放射線療法(involved-field radiotherapy:IF-RT),またはR-CHOP療法6コースのいずれかを実施する。いずれの治療法を選択するかについては,放射線照射による毒性(頭頸部領域での唾液分泌障害や若年女性の乳房照射による乳癌発症リスクなど)と化学療法を重ねることによる毒性のバランスを考慮して決定する。最近では毒性の点からR-CHOP療法6コースで治療を実施することが増えている。60歳以下でIPIのリスク因子がなく,かつ,かさばり病変がない(径7.5cm未満)症例(結果的にⅠ期,Ⅱ期)では,R-CHOP療法4コース(リツキシマブのみ6回投与)のみで6コースに劣らない成績が報告されており,適応を慎重に判断してR-CHOP療法を4コースにとどめて実施する。

    未治療で進行期(bulky Ⅱ期,Ⅲ期,Ⅳ期)に対しては,R-CHOP療法6~8コースを実施する。6コースと8コースの優劣は未確定である。

    80歳以上の高齢者に対しては,用量を減量したR-miniCHOP療法6コースを実施する(用量は「治療の実際」を参照)。

    脳原発DLBCL,精巣原発DLBCLなどの特殊な節外原発DLBCLには個別の対応が必要である。

    再発した場合には救援化学療法を施行する。救援化学療法の代表的レジメンは,CHASER療法,R-ESHAP療法,R-ICE療法,R-EPOCH療法などである。レジメン間の優劣は示されていない。65歳以下で救援化学療法により奏効が得られた場合には,自家末梢血幹細胞移植を併用した大量化学療法を実施する。最近,CAR-T療法で良好な成績が報告されており,大量化学療法後の再発患者や大量化学療法が適応とならない患者で救援化学療法を行った後に適応を検討する。

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