胎生期に開存している動脈管は,通常出生後72時間以内に閉鎖して動脈管索となる。閉鎖せずに残存しているものを動脈管開存症(patent ductus arteriosus:PDA)と言う。早産児や低出生体重児では,薬物療法による治療も選択肢となる。それ以外のPDAに対する治療は,①症候性PDAの治癒,あるいは②感染性心内膜炎(infective endocarditis:IE)予防のための完全閉塞を目的として,外科治療あるいはカテーテル治療が行われる。ただし,無症候性のPDAで心雑音を聴取しないものはIEリスクも低く,積極的な治療対象とはされていない。
NICU入院時スクリーニングや心雑音(典型的には連続性雑音)の原因精査等の際に行う心臓超音波検査で診断する。その際に,動脈管の形態,肺高血圧の有無,肺血流の多少,合併心奇形の有無を検討する。未熟児では頭部超音波検査,腹部超音波検査を加え,臓器血流障害の有無を評価する。
明らかな先天性心疾患を合併していないPDAに対する治療の要否は以下の通りに考える。
未熟児PDAは特に超低出生体重児において脳室内出血のリスクとなるため,症候化する前に先制的にインドメタシンを予防投与することが推奨されている〔なお,インドメタシンと同じくシクロオキシゲナーゼ(COX)阻害薬であるイブプロフェンもPDAに対する治療効果は同等であるが,脳室内出血の予防としては有効でない1)とされる〕。
左右短絡が多く,肺高血圧が改善しない例や呼吸障害,他臓器血流の低下などの所見がある例ではCOX阻害薬の投与を検討する。COX阻害薬投与によって腸管血流の減少や,腎障害などの有害事象が起こりうるため,投与ごとに治療継続の可否を判断する。また,12~24時間間隔での連続4回以上の投与は腸管壊死などのリスクが高まるため,連日投与を行う場合には1クールでの投与を3回までとする。薬剤治療が無効である,もしくは緊急性が高い場合には,外科治療を優先する。
上述同様に症状のある新生児あるいは乳児PDAに対しては,外科治療あるいはカテーテル治療を選択する。
無症候性PDAの治療目的は,将来のIE罹患リスクの軽減である。心雑音を伴わない無症候性PDAに対する治療の要否については議論の余地がある。
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