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腎機能が悪化した糖尿病患者の蛋白質の制限

No.5085 (2021年10月09日発行) P.55

北田宗弘 (金沢医科大学糖尿病・内分泌内科学准教授)

古家大祐 (金沢医科大学糖尿病・内分泌内科学客員教授)

登録日: 2021-10-11

最終更新日: 2021-10-07

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腎機能が悪化した糖尿病患者は,蛋白質を制限して炭水化物を増やす指導をされますが,血糖コントロールが悪化します。通常,蛋白質80gを食事から摂っているところ,その半分の40gにしても,毎日の平均である200gの蛋白質をオートファジーにて体内の蛋白質の新陳代謝として再利用しています(NHKの放送大学では400gと言っていました)。つまり,200g+80gの合計280gを,200g+40gの240gにしただけです。1日の蛋白質代謝のうち9%しか減らしていません。食事の蛋白質を半分にしても総蛋白代謝の約1割しか減らしていないことになります。蛋白質制限をしてもあまり意味がないように思います。蛋白質の制限についてご教示下さい。(東京都 F)


【回答】

【糸球体高血圧/過剰濾過の改善を介した腎保護効果を発揮する可能性がある】

食餌として摂取された蛋白質やアミノ酸は,遊離アミノ酸の形でアミノ酸プールとして存在します。体蛋白合成にはアミノ酸プールからアミノ酸が消費されますが,体蛋白分解系(オートファジー,プロテアソーム系)により供給されるため,遊離アミノ酸はアミノ酸プールに一定量が維持されます。したがって,蛋白質摂取が減少した場合でも,オートファジーを含む体蛋白分解系の活性化により,遊離アミノ酸量は動的平衡状態が保たれます。

近年オートファジーの活性化と腎を含む臓器保護との関連性が基礎的研究を中心に多数報告されています1)。腎症を呈する2型糖尿病患者の腎生検を用いた検討でもオートファジーの低下2)3)およびオートファジーを負に制御するmechanistic target of rapamycin complex1(mTORC1)の活性化2)が糖尿病(性)腎症の病態に関与している可能性が報告されています。アミノ酸はmTORC1の活性化因子のひとつであるため,蛋白質制限,つまりアミノ酸制限は,mTORC1の抑制を介したオートファジー活性化により腎を含む臓器保護作用を発揮する可能性があると考えられます4)。しかし,実臨床で実施している程度の蛋白質制限がオートファジーを誘導し腎保護効果を発揮するかどうかは現時点では明らかではないため,今後の検討を要します。

糖尿病(性)腎症を含む慢性腎臓病の発症・進展機序として,糸球体高血圧/過剰濾過が重要な役割をはたしていることが知られています。高蛋白質食では,IGF-1(インスリン様成長因子)やグルカゴン等による糸球体輸入細動脈の拡張や,レニン・アンジオテンシン系の活性化と関連する輸出細動脈の収縮を介して糸球体高血圧/濾過量を呈することが報告されています5)。したがって,低蛋白質食は,輸入細動脈拡張あるいは輸出細動脈収縮の是正による糸球体高血圧/過剰濾過の改善を介した腎保護,特に糸球体保護効果を発揮する可能性が考えられています5)。そのほか,低蛋白質食は,尿毒素物質の産生軽減,ナトリウム・リン・酸負荷の軽減効果もあると考えられています5)

なお低蛋白質食は,個々の症例に応じて,利点(腎保護)がリスク(主に栄養障害)を上回る場合に,専門医・管理栄養士の指導のもと,エネルギー摂取を十分確保した上で実施することが肝要です。

【文献】

1)Mizushima N, et al:Nature. 2008;451(7182): 1069-75.

2)Yamahara K, et al:J Am Soc Nephrol. 2013;24 (11):1769-81.

3)Tagawa A, et al:Diabetes. 2016;65(3):755-67.

4)Kitada M, et al:Diabetologia. 2016;59(6): 1307-17.

5)Kalantar-Zadeh K, et al:N Engl J Med. 2017; 377(18):1765-76.

【回答者】

北田宗弘 金沢医科大学糖尿病・内分泌内科学准教授

古家大祐 金沢医科大学糖尿病・内分泌内科学客員教授

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