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播種性血管内凝固(DIC)[私の治療]

No.5089 (2021年11月06日発行) P.40

池添隆之 (福島県立医科大学血液内科学講座主任教授)

登録日: 2021-11-05

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  • 播種性血管内凝固(disseminated intravascular coagulation:DIC)は様々な基礎疾患の存在下に起こる凝固・線溶系の異常活性化を特徴とする後天性の血栓性疾患である。DICは一般的に線溶抑制型と線溶亢進型に分類され,それぞれで臨床像が大きく異なる。線溶抑制型DICの代表的な基礎疾患は敗血症で,このタイプのDICでは炎症性サイトカインが血管内皮細胞に働きかけ,プラスミノゲン活性化抑制因子1(PAI-1)を発現誘導するため,プラスミンの産生が抑制される。よって微小血栓の溶解が進まず,結果として末梢循環不全による臓器機能障害をきたしやすくなる。一方,急性白血病を基礎疾患として発症する線溶亢進型DICでは,疾患に伴う血小板減少に加え,白血病細胞が線溶促進物質を豊富に産生するため,著しい線溶亢進とそれに伴う出血傾向を認めることが多い。

    ▶診断のポイント

    様々な基礎疾患に合併したDICを感度・特異度よく診断するため,2017年に日本血栓止血学会から「DIC診断基準2017年版」が発表された1)。凝固活性化マーカーである可溶性フィブリン(SF)やトロンビン-アンチトロンビン複合体(TAT)を評価項目に取り入れたが,これらの検査が期待した以上に普及しないため,この診断基準の使用頻度は低い。感染症に合併するDICの診断には急性期診断基準が,そして白血病に合併するDICの診断には旧厚生省診断基準が使用されることが多い。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    DIC治療の原則は基礎疾患の治療を行うことである。抗凝固療法は個々の患者の基礎疾患や臨床症状を鑑みて選択する。肺や消化管などの主要臓器に出血を認める場合は抗凝固療法を控え,血小板や新鮮凍結血漿の輸血による補充療法に努める。線溶抑制型と線溶亢進型のDICで治療の考え方は異なるため,それぞれについて代表基礎疾患である敗血症と急性前骨髄球性白血病(APL)を例に挙げてその治療法を紹介する。

    敗血症性DICは抗凝固療法を行うことで生命予後が改善することが,わが国の敗血症レジストリの後方視的解析で示された。遺伝子組換えトロンボモジュリン製剤(rTM)は抗凝固作用に加え,抗炎症作用や血管内皮保護作用も持ち合わせており,敗血症性DICに対する治療効果が期待される。3つのランダム化比較試験の統合解析から,rTMを使用することで敗血症性DIC患者の28日目の転帰が改善することが示された2)。また,アンチトロンビン(AT)製剤も敗血症患者のDIC離脱を促進することや生命予後を改善する可能性が報告されている。最近,遺伝子組換えAT(rAT)製剤が市販された。rATを使用することでヒト血漿由来の病原体の感染リスク軽減が期待できる。敗血症性DICに対するrTMとAT製剤の併用による上乗せ効果は認められていない。

    APLに合併するDICでは激しい出血傾向を認めることが多いが,主要臓器に出血がなければrTMの使用を考慮する。rTMにはプラスミンの産生を媒介する膜蛋白,アネキシンⅡの発現を低下させて線溶系を抑制する作用があることも示されており,またrTMの使用でAPL患者の出血傾向を助長することなく,DICから離脱できることが示されている3)。APLをはじめ急性白血病に合併するDICでATが70%以下に低下することは稀なため,このタイプのDICに対するAT製剤の使用経験は乏しい。ヘパリン類の使用は出血を助長する危険があり勧められない。日本では合成プロテアーゼ阻害薬もDICの治療薬として承認されているが,静脈炎の副作用回避のため中心静脈からの投与が必要となる。したがって,血小板数が少なく,DICによる出血症状を伴うAPL患者には使用しづらい。また,抗線溶作用のあるトラネキサム酸の使用は重篤な血栓症をまねく危険があるので,単独使用は原則禁忌とされる。

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