心房細動(AF)例では認知機能低下リスクが増加し、DOACを用いた抗凝固療法はワルファリンに比べ、認知機能低下を抑制する可能性が示されていた。しかし、小規模ランダム化試験ではその可能性を確認できず、逆にワルファリンの優位が示唆された。13日から15日までオンライン開催された米国心臓協会(AHA)学術集会において、GIRAF試験の結果として、Bruno Caramelli氏(サンパウロ大学、ブラジル)が報告した。脱落も多く、エビデンスの質としては必ずしも高くないと思われる。
GIRAF試験の対象は、「CHA2DS2-VASc≧1」で脳血管障害既往と認知症を認めない、70歳以上の非弁膜症性心房細動/粗動200例である。重篤な肝・腎疾患合併例や近時出血既往のある例は除外されている。
これら200例は、DOACダビガトラン110/150mg×2/日群(99例)と、「INR 2-3」目標ワルファリン1日1回群(101例)にランダム化され、非盲検下で2年間観察された。
ただし解析対象となったのは、試験開始時と2年後の2機会で認知機能評価が可能だった149例だった。ランダム化以降の除外率は、DOAC群:12.9%、ワルファリン群:14.8%である。
試験期間を通じたワルファリン群のTTRは69.9%だった。また2年間の脳卒中・TIA発症は、それぞれワルファリン群の1例のみ、また大出血もワルファリン群の1例だけだった。心筋梗塞は両群とも1例ずつだった(これらはいずれも解析から除外)。
これら149例の平均年齢は75歳、60%が男性だった。またMMSEスコア中央値には群間差がないものの、DOAC群ではワルファリン群に比べ、MoCAスコア、神経心理学的検査バッテリー(NTB)とコンピュータ生成神経心理学的テスト(CGNT)の成績は、若干ながら有意に良好だった。なお認知機能評価は、試験開始時、2年追跡後のいずれも、ランダム化を遮蔽されていない2名の研究者が実施した。
1次評価項目は、MMSE、MoCA、NTB、CGNTそれぞれの変化幅である(co-primary)。
その結果、2年間のMMSEスコア低下幅は、有意ではないものの、DOAC群でワルファリン群に比べ大きかった(群間差:0.12、P=0.75)。またMoCAスコア低下幅はDOAC群で有意に大きかった(群間差:0.96、P=0.02)。一方、NTB低下幅はワルファリン群で0.05、CGNT低下幅はDOAC群で0.15大きかったが、いずれも有意差には至らなかった。
なお、同様の試験として、米国で101例を対象としたランダム化試験“CAF”も、本年3月に試験自体は終了している(NCT03061006)。
GIRAF試験は研究者主導試験であり、一部資金をブラジルBoehringer Ingelheim社が提供した。スポンサー社は試験にはまったく関与していない。