頭蓋骨あるいは脊椎の骨と硬膜の間に血腫が発生するものを言い,大半は頭部外傷(交通事故,転落,スポーツ,喧嘩など)に伴い損傷を受けた中硬膜動脈あるいは静脈洞を出血源とするものが多い。頭部外傷の1~3%を占めるとされ,頭部外傷手術例の25%程度となっている。10~20歳代と40~60歳代にピークを有するが,年齢分布の高齢化に伴い高齢者が増加傾向にある。
典型的には受傷直後は意識が比較的清明である(意識清明期)にもかかわらず,3~6時間経って急速に意識障害や瞳孔不同が出現・進行する。ただし,意識清明期が24時間近くある場合や,脳挫傷などの併発により意識清明期を有さない場合もある。また,後頭蓋窩硬膜外血腫や脊髄硬膜外血腫などの特殊型もある。
フィブリノーゲン低値やDダイマー高値など血液凝固異常の有無を評価する。
画像診断の第一選択は単純CTスキャンであり,典型的には頭蓋骨直下に両凸形の高吸収域が認められる。血腫は通常縫合線を超えないため,縫合線を超えることが多い急性硬膜下血腫との鑑別に役立つ。超急性期には少量であっても急激に増大する場合があるため,注意深い経過観察とともに,頻回のCT検査のフォローアップを要する。また,脳挫傷や脳腫脹および他の外傷性頭蓋内血腫(外傷性くも膜下出血,外傷性脳内血腫,急性硬膜下血腫など)を併発する場合もある。単純X線撮影やCT検査の骨条件画像,三次元再構成画像(図)では,硬膜外血腫の9割に中硬膜動脈や静脈洞に一致した血管溝を横切る線状骨折を認め,診断に有用である。頭部MRIは,脳挫傷などの合併有無の確認に有用である。頭蓋底や脊髄の硬膜外血腫疑い例では,骨の影響を受けにくいMRI撮影が有用である。
頭蓋内損傷の合併のない例では,後遺症状なく回復する可能性のある疾患であるため,適切な診断と必要に応じて早期の外科的介入を要する。意識障害がなく神経症状に乏しい急性硬膜外血腫は緊急入院の上,経過観察とする。一方,「頭部外傷治療・管理のガイドライン(第4版)」における硬膜外血腫の手術適応に従い,厚さ1~2cm以上の血腫または20~30mL以上の血腫(後頭蓋窩は15~20mL以上)や合併血腫のある急性硬膜外血腫がある場合は,原則として手術を行う。高齢者は軽症であっても,硬膜外血腫を含む外傷性頭蓋内血腫の頻度が高いため,積極的に頭部CTを施行する。特に抗凝固薬内服中の高齢者においては,初回CT検査で異常がなくとも2回目の検査で血腫が認められる場合(遅発性硬膜外血腫)があるため,受傷の程度や症状を鑑みて,入院も考慮した上で慎重に経過観察する。
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