臍帯脱落以降に臍部の膨隆が出現し,気づかれる。ヘルニア内容は腸管であることが多い。臍帯動静脈,あるいは臍帯脱落後の臍輪の閉鎖が遅れることにより生じる。嵌頓等の合併症はきわめて稀であり,多くは1歳頃までに自然閉鎖する。発生率は約4%とされ,低出生体重児では頻度が高い。
臍輪は閉鎖したものの,余剰の皮膚,瘢痕組織により膨隆がみられる場合は,狭義には臍ヘルニアではなく臍突出とされる。
臍部に一致して,皮膚に覆われた大小様々の膨隆を認め,圧迫にて容易に還納される。還納すると円形のヘルニア門を触知する。軽度の膨隆があるが還納できず,ヘルニア門を触知しない場合は,上述の臍突出に相当する(図)。
近年,本症に対する圧迫療法が普及してきているが,使用物品や方法は施設や医師により様々である。筆者は,6カ月以下の乳児で家族の希望がある場合には,綿球とフィルムドレッシング材を使用した簡便な圧迫療法を行っている。ヘルニア脱出を示指で完全に還納して臍を陥凹させ,陥凹部分に綿球を充塡し,ドレッシング材で被覆する。初回は外来にて家族に指導しながら行い,次回以降は綿球とドレッシング材を購入して,自宅で家族に行ってもらう。交換頻度は週1回程度,剝がした状態で入浴し,貼り替えは可能であれば2人で行ってもらう。腸管を完全に還納しヘルニア門を触れる状態で圧迫すること,皮膚の発赤・発疹等が出現したら治るまでは休止することに注意してもらう。外来受診は1カ月に1回程度としている。
効果のある場合は2,3カ月以内に縮小傾向となることが多く,まったく膨隆せずヘルニア門を触れなくなれば終了する。治癒しない場合でも,家族が納得すれば8~10カ月頃には終了している。なお,臍突出の場合は圧迫療法を行っていない。
圧迫療法の有無にかかわらず,2歳を過ぎても治癒せず,家族や本人の希望がある場合には手術を行う。入院,全身麻酔下に,臍輪下半周に沿って弧状切開し,ヘルニア囊を全周性に剝離,横断,切除して,ヘルニア門を縦方向に全層一層結節縫合して閉鎖する。皮膚の裏面のヘルニア囊,余剰の瘢痕組織を可及的に切除し,中心部を筋層に固定して陥凹を形成し,皮膚を縫合する。皮膚の余剰が多い場合には,楔形,三日月形等に皮膚をトリミングする。臍輪が大きい場合等は,整容性に優れた臍を形成することは困難であり,あらかじめその旨を家族と年長児であれば本人にも伝えておく。
手術に関しては,臍突出に対しても同様に行う。
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