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インフルエンザ(成人)[私の治療]

No.5101 (2022年01月29日発行) P.44

川名明彦 (防衛医科大学校内科学講座(感染症・呼吸器)教授)

登録日: 2022-01-31

最終更新日: 2022-01-26

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  • インフルエンザは,インフルエンザウイルスによって引き起こされる急性ウイルス感染症である。A,B,C,D型があるが,ヒトに典型的なインフルエンザ症状を起こすのはA型とB型である。一般に寒い時期に流行するので,季節性インフルエンザと言う。

    ▶診断のポイント

    1~2日の潜伏期間の後,突然の高熱,鼻汁・咽頭痛などの上気道炎症状,頭痛,筋肉痛,全身倦怠感などで発症する。多くは自然治癒し,比較的予後良好な疾患と言えるが,高齢者や基礎疾患を有する場合は重症化し死亡する例もある。流行期(わが国では,例年11~4月)にこれらの症状が認められた場合,診断は比較的容易である。鼻腔吸引液,鼻腔拭い液,咽頭拭い液などを検体とし,迅速診断キット(イムノクロマト法)によるウイルス抗原の検出ができれば,臨床的には診断確定となる。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    欧米では,かつて重症例を除き抗インフルエンザウイルス薬(以下,抗ウイルス薬)による治療は必ずしも必要ないとされていたが,近年はすべての症例に対し早期診断・早期治療が推奨される傾向にある。

    治療の適応として,①インフルエンザで入院を要する症例,②外来患者であっても症状が強く悪化傾向にある症例,③合併症のリスク要因を持つ症例(例:65歳以上の高齢者,妊婦,長期療養施設の居住者,慢性肺・心・腎疾患,免疫抑制状態,ステロイドなど免疫抑制薬使用者,担がん患者)に対しては速やかに抗ウイルス薬の投与を開始する。また,リスクを持たない外来患者であっても,発症48時間以内の症例には抗ウイルス薬が推奨される。

    現在使用可能な抗ウイルス薬には,ノイラミニダーゼ阻害薬(オセルタミビル,ザナミビル,ペラミビル,ラニナミビル)とCap依存性エンドヌクレアーゼ阻害薬(バロキサビル マルボキシル)がある。内服薬,吸入薬,点滴静注薬があり,患者の状況により使いわける。

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