単クローン性免疫グロブリン血症(monoclonal gammopathy of undetermined significance:MGUS)は,単クローン性に免疫グロブリン,あるいはグロブリン軽鎖(κ鎖,λ鎖)が増加する病態である。稀に一部が悪性リンパ腫,多発性骨髄腫(multiple myeloma:MM)などのリンパ形質細胞系の悪性腫瘍に病態が移行するため「前がん状態」と考えられている。増加するM蛋白の種類から3つにわけられ,これまでの後方視研究からは,以下の通りに病態が移行する可能性が示された1)。
① IgM型MGUSの場合1%/年の割合でマクログロブリン血症(Waldenström macroglobulinemia:WM),原発性アミロイドーシス(immunoglobulin light chain amyloidosis:AL),稀にIgM型MMに進行。
② non-IgM(IgG型とIgA型)MGUSは0.5%/年でMM,孤発性形質細胞腫,ALに進行。
③軽鎖型MGUSは0.3%/年の頻度で軽鎖型MM,ALに進行。
高齢者に多く,欧米の研究では50歳以上では3.2%,70歳以上では5.3%という高い罹患率が示されており2),親子,兄弟間にWM,MMなどのB細胞性腫瘍の発病者がいる場合が稀ではない。
血液検査の異常のみで偶然に発見され,無症候性である。
診断確定のために,血液免疫電気泳動,血清フリーライトチェーン(FLC)検査のほかに,骨髄検査が行われる。M蛋白量が3g未満(軽鎖の場合は尿M蛋白が500mg/日未満),骨髄検査で腫瘍細胞が10%未満,リンパ腫,骨髄腫などに関連した症状,臓器障害がないことが診断基準である。
低リスク〔IgG型MGUSでM蛋白量が1.5g未満,FLC比(κ/λ)が0.26~1.65と正常〕の場合は,骨髄検査を行わず,血液検査での経過観察のみとする。これ以外の場合や,低リスクであっても骨髄腫やリンパ腫に関連した症状が疑われる場合は,骨髄検査,各種画像検査を必要に応じて進める。
残り974文字あります
会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する