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【識者の眼】「救急医療体制における諸外国と日本の違い」鈴木隆雄

No.5111 (2022年04月09日発行) P.59

鈴木隆雄 (Emergency Medical Centerシニア・メディカル・アドバイザー)

登録日: 2022-03-08

最終更新日: 2022-03-08

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開発途上国をも含めた諸外国の救急医療体制を見てみよう。州都の人口が50万前後とすると、その中心部に大学病院群があり、内科や外科など主要科はそれぞれが500床以上の病院として存在する。病院の外来部門に一般外来はなくあるのは救急部門のみで、各病院はその科だけの救急患者を扱う。地方都市でも病床数が少なくなるだけで基本的な体制は同じである。したがって、その町の救急車はすべて同じ場所に集結する。患者が増えると病院前は救急車で渋滞するが、日本のように受け入れ先が見つからず、救急車が右往左往することはない。

コロナのような患者激増の場合でも、諸外国は救急車の流れは同じなので、直ちに大規模な医療施設の設置が計画される。対する日本は、多くの救急病院がそれぞれ全科を対象としており、一病院だけ単科の大規模施設を増設するのは難しい。

もう一点、大きな違いがある。諸外国の上記病院群には、熱傷センターと脊髄損傷(脊損)センターも付属されている。地方で受傷した場合でも、全身状態が落ち着き次第センターに送られ、リハビリ・社会復帰のプログラムに加わる。

日本の救急病院は多くが全科対象としているため、それぞれが熱傷や脊損も受け入れている。急性期が終われば熱傷や脊損専門の長期療養施設へ転送すべきだが、上記センターがないと病院運営にも支障が出てくる。現状はその問題の狭間で病院事務が、医療費支払いや各種手続き等、それに不慣れな患者家族に寄り添い、転院先施設の検索や交渉と多大な仕事をこなしている。

紛争地での上記センターには、国際的な非政府組織が援助活動していることが多い。中には何十年と活動を続けている組織もあり、社会復帰までの流れは先進国の日本より優っているのでは、と感じることがある。熱傷や脊損というのは、初期治療もさることながら、その後のリハビリと社会復帰体制が重要で、日本も受傷から社会復帰まで一貫したシステムが必要と考える。

鈴木隆雄(Emergency Medical Centerシニア・メディカル・アドバイザー)[熱傷][脊損][社会復帰システム]

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