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左心耳閉鎖術後に抗凝固療法は中止可能か

No.5108 (2022年03月19日発行) P.51

山﨑 浩 (筑波大学医学医療系循環器内科講師)

登録日: 2022-03-18

最終更新日: 2022-03-15

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心房細動に対し,左心耳閉鎖術が広く行われるようになりました。血栓は,左心耳で生じることがほとんどとされています。左心耳閉鎖術後,抗凝固療法は中止可能ということでしょうか?(静岡県 T)


【回答】

【術後45日以降に中止可能となるが,デバイス血栓症が3~4%の症例で生じることが報告されている。中止後は,画像評価により血栓の有無を適切なタイミングで確認する必要がある】

左心耳閉鎖術は,非弁膜症性心房細動(nonvalvular atrial fibrillation:NVAF)患者のうち,血栓塞栓症の予防が必要とされ,また長期的な抗凝固薬の代替が検討される症例への治療(class Ⅱb)として行われています。動物モデルにおいては,左心耳入口部に留置された左心耳閉鎖デバイスの表面が経時的に内皮細胞で覆われることにより,抗血栓作用が発揮されると考えられています1)

NVAF患者に対する長期ワルファリン内服とWATCHMANTMデバイスの有効性を検証したPREVAIL研究,およびPROTECT AF研究の2つの無作為試験では,デバイス留置後45日までは抗凝固薬(ワルファリン)と抗血小板薬(アスピリン),術後6カ月までは抗血小板薬2剤併用(アスピリン・チクロピジン系),それ以降は抗血小板薬単剤(アスピリン)を内服するというプロトコルが用いられました。

2つの無作為試験の統合解析において,長期ワルファリン内服とWATCHMANTMデバイス群で主要有効性評価項目(脳卒中,全身性血栓塞栓症,心血管死/原因不明死)および主要安全性評価項目(重大な出血および手技関連合併症)に有意差は認められませんでした2)。また,出血性脳卒中,後遺障害を伴う致死的脳卒中,心血管死/原因不明死のイベント発現率は,WATCHMANTMデバイス群で有意に低下しました。

これらの結果から,WATCHMANTMデバイスは,血栓塞栓症に対して抗凝固療法を必要とし,また出血性イベントのリスクが高いため長期的な抗凝固療法の継続が困難なNVAF患者に対する新たな治療選択肢となりうることが示されました。

わが国の適正使用指針では,経皮的左心耳閉鎖術は,血栓塞栓症の予防を必要とし,かつ出血リスクが高い症例に対して行うこととされています。

多くの症例では,術後45日以降に抗凝固薬は中止可能となりますが,左心耳閉鎖デバイスの表面に血栓が生じるデバイス血栓症が3~4%の症例で生じることが報告されています3)。そのため,抗凝固薬を中止した場合には,経食道心エコーや造影CTを用いた画像評価により,デバイス血栓の有無を確認することが必要とされています。特に,脳梗塞の既往,永続性心房細動,低左心機能,左心耳入口部が大きい症例ではデバイス血栓が生じるリスクが高いと考えられており3),抗凝固薬を中止した場合には画像評価を適切なタイミングで行うことが望ましいとされています。

【文献】

1)Kar S, et al:JACC Cardiovasc Interv. 2014;7(7):801–9.

2)Reddy VY, et al:J Am Coll Cardiol. 2017;70 (24):2964-75.

3)Dukkipati SR, et al:Circulation. 2018;138(9):874-85.

【回答者】

山﨑 浩 筑波大学医学医療系循環器内科講師

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