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COVID-19治療薬の最新情報─Omicron株に対するワクチン,抗体薬,抗ウイルス薬の効果と問題点[J-CLEAR通信(139)]

No.5111 (2022年04月09日発行) P.28

山口佳寿博 (東京医科大学呼吸器内科客員教授/健康医学協会東都クリニック呼吸器内科/J-CLEAR評議員)

登録日: 2022-04-07

最終更新日: 2022-04-06

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1 はじめに─Omicron株感染の動向

新型コロナ感染症が発生して以来2年が経過した。この2年の間に,武漢原株から1500種類以上の子孫株(変異株)が発生している1)。WHOは,それらの変異株にあって世界的規模で多大な健康被害をもたらしているウイルスを“懸念される変異株(variants of concern:VOC)”と定義した2)。わが国にあっては,2021年度にAlpha株(B.1.1.7)による第4波,Delta株(B.1.617.2)による第5波を経験した3)。2021年10月以降,コロナ感染者数は低水準で推移したが,2022年の1月初旬よりOmicron株(B.1.1.529)に起因する第6波が始まった。厚生労働省(厚労省)の新型コロナウイルス感染症対策推進本部の発表によると,1月下旬には,わが国の背景ウイルスの99%がOmicron株に置換されているとのことである。第6波の感染者数は2月初旬にピークを迎え,それ以降,3月中旬現在に至るまで低下しつつある。

Omicron株の遺伝子変異,感染性,病原性などの基礎的特徴については筆者らの論評を参照して頂きたいが4)5),簡単にまとめると,①Omicron株はそれまでのVOCに比べ多彩な遺伝子変異を有し,ウイルス全長で45〜52個,S蛋白で26〜32個のアミノ酸変異が想定されている。これらの多彩な遺伝子変異の結果,Omicron株は高度の液性免疫回避を示し,従来のワクチンならびにmonoclonal抗体製剤の効果を著明に阻害する。しかしながら,②重症化のトリガーとして重要な肺末梢でのウイルス増幅能は低く肺末梢での損傷(肺炎)の程度は低い6)

2月に入りOmicron株の亜型に関し以下の重要な知見が追加された7)〜9)。③Omicron株には原型であるBA.1(B.1.1.529.1)に加え,BA.1にR346K変異が加わったBA.1.1,BA.1と遺伝子変異が有意に異なるBA.2(B.1.1.529.2)ならびにBA.3(B.1.1.529.3)の亜型が存在することが判明した。しかしながら,BA.3は局所的播種にとどまり,現時点ではBA.1,BA.1.1,BA.2の動態が重要である。Delta株を基準としたBA.1の感染性は1.7倍,BA.2の感染性は2.7倍と報告されているが,BA.1とBA.2の間で病原性に差があるかどうかについては明確な結論が得られていない。④世界的に見た場合,2022年1月最終週から2月下旬にかけて,BA.1,BA.1.1の検出頻度が低下,代わってBA.2の検出頻度が12%から36%に上昇している。わが国でも2022年1月下旬にはOmicron株の主流がBA.1からBA.1.1に置換され,BA.2の検出頻度が徐々に上昇している。本稿では,BA.1,BA.1.1,BA.2の3種の亜型を総称してOmicron株と定義する。

今後,Omicron株感染がどのような動向を示すかは不明で,①比較的病原性の低いBA.1,BA.1.1の出現で,入院・死亡が続出する悲惨なpandemicの終焉(風邪コロナ化),②現在施行されているワクチンbooster接種により賦活化された液性・細胞性免疫が時間経過とともに低下,数カ月後に感染性の高いBA.2に起因する第7波,③Omicron株と別系統の新たな変異株〔BA.1とAY.4(Delta株亜型)の遺伝子組換えを含む〕の出現によるpandemicの発生(第7波),などの可能性が考えられるが,疫学データからは,BA.2を主流ウイルスとする第7波発生の可能性が最も高いと,筆者は考えている。

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