食道悪性腫瘍には上皮性食道悪性腫瘍,非上皮性食道悪性腫瘍,転移性食道悪性腫瘍があり,その約98%を占める上皮性食道悪性腫瘍を「食道癌」として解説する。
食道癌の罹患率は男性では軽度増加傾向,女性では横ばいであり,死亡率は男性では横ばい,女性では減少傾向である。性別は男性が約85%と多く,年齢は60~70歳代が多い。占居部位は頸部食道が約5%,胸部上部食道が約10%,胸部中部食道が約50%,胸部下部食道が約30%,腹部食道が約5%で,胸部中部食道が最も多い。組織型は扁平上皮癌が約90%と大部分を占め,ついで腺癌が約4%である。多臓器重複癌は,同時性と異時性を含めて約25%あり,その中では胃癌(約30%),咽頭癌(約15%)の順に多い。
食道扁平上皮癌のリスク因子は飲酒と喫煙である。腺癌のリスク因子は,胃食道逆流症による慢性炎症が原因となって形成されるBarrett上皮と喫煙である。
症状としては,食道狭窄感,嚥下困難,胸痛,食道違和感などが多く,吐血,嗄声などを認めることもある。
上部消化管内視鏡検査は診断に最も有用な検査であり,食道入口部から食道胃接合部までを丁寧に観察する。また,特殊光観察も併用し,生検による病理組織診断も行う。進行度診断には,CT検査,超音波検査(頸部・腹部),超音波内視鏡検査,PET検査,MRI検査,上部消化管造影検査などが必要である。全身状態の評価には,身長・体重測定,血液・尿検査,心電図検査,呼吸器機能検査などに加え,併存疾患と既往症も考慮する。
治療方針はガイドラインで示されているので準拠するのが望ましいが,最終的には個々人の病態に応じた治療を選択するのが大切である。食道癌の診断後には,速やかに専門医へ紹介して,精密診断の後に最新のエビデンスに基づいた実績のある治療法を検討する。
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