編集: | 松島誠(松島病院院長) |
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編集: | 佐原力三郎(社会保険中央総合病院副院長) |
判型: | B5判 |
頁数: | 320頁 |
装丁: | カラー |
発行日: | 2011年08月22日 |
ISBN: | 978-4-7849-6205-1 |
版数: | 第1版 |
付録: | - |
痔核、肛門周囲膿瘍、痔瘻、裂肛に的を絞った実践書
各領域のエキスパートが、術中写真とイラストを用いて手術手技のコツを余すところなく解説しています。
術前・術後管理についても、豊富な経験にもとづく教訓を実際的知識としてまとめました。
さらに「知っているようで知らない」肛門の外科解剖を、美しい組織図譜として提示。
消化器外科医必携の一冊です(本文300頁・カラー写真400枚超)。
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◆第1章 肛門部の解剖
1.1 女性矢状断①
1.2 女性矢状断②
1.3 男性矢状断
1.4 女性前額断
1.5 男性前額断
1.6 血管叢
1.7 肛門腺
◆第2章 肛門疾患の診断と治療の概略
2.1 痔核の診断と治療
1 痔核の分類
2 痔核の症状
1)外痔核
2)内痔核
3 痔核の診断
4 痔核の治療
1)保存的治療
2)硬化療法
3)ゴム輪結紮術
4)手術
2.2 肛門周囲膿瘍・痔瘻の診断と治療
1 肛門周囲膿瘍の病態
1)肛門腺由来の感染
2)肛門腺以外からの感染
2 肛門周囲膿瘍の分類
3 肛門周囲膿瘍の診断
1)症状
2)視診,肛門指診
3)補助診断
4)鑑別疾患
4 肛門周囲膿瘍の治療
1)保存的治療
2)外科治療のポイント
3)麻酔
4)実際の切開排膿術
5)切開排膿後の治療
5 痔瘻の病態と分類
6 痔瘻の診断
1)痔瘻の特徴
2)問診
3)視診
4)肛門指診
5)肛門鏡診
6)補助診断
7)鑑別疾患
7 痔瘻の治療
8 クローン病の痔瘻
1)クローン痔瘻の特徴
2)クローン痔瘻の分類
9 クローン痔瘻の治療
1)治療方針
2)外科治療
3)保存療法としてのInfliximabの位置づけ
4)クローン痔瘻経過中の注意点:痔瘻癌
2.3 裂肛の診断と治療
1 裂肛の診断
2 裂肛の治療
◆第3章 肛門疾患の歴史的背景
3.1 近代の肛門外科の発展
3.2 日本の痔の歴史
1 江戸時代以前
2 江戸時代
3 明治・大正・昭和
1)腐食療法・硬化療法
2)手術療法の変遷
◆第4章 肛門疾患診療の実際
4.1 内痔核・外痔核の手術;結紮切除法
1 当院における痔核結紮切除術の現状
2 痔核結紮切除術の理念
3 前処置
1)術前管理
2)麻酔法
3)体位
4)指診・触診
4 手術手技
1)局所麻酔薬の局注
2)開肛器の選択
3)切除位置のImage & Design
4)痔核切離前の根部動脈の処理
5)皮膚切開(ドレナージ創形成)
6)内痔核の剥離
7)肛門管上皮,痔核粘膜の切離
8)痔核根部・根部動脈の処理
9)創閉鎖
5 術後管理
4.2 内痔核・外痔核の手術;その他の術式
1 ゴム輪結紮術
2 皮膚切除内痔核結紮術
3 血栓性外痔核切除術
4.3 PPHによる痔核,直腸粘膜脱の治療
1 痔核の観察と肛門の用手的拡張
2 PPH挿入のための外筒の挿入と固定
3 巾着縫合
4 PPH本体の挿入
5 PPH本体の機器操作
6 切除直腸粘膜の確認
7 止血操作
8 Staple lineの確認
4.4 ALTA PAOによる内痔核硬化療法
1 PAO硬化療法
2 ALTA療法
1)ALTA療法の適応
2)内痔核の病因とALTAの薬理作用について
3)手技の概略
3 ALTA療法の前処置など
1)前処置
2)体位
3)器具
4)麻酔
5)注射前観察
4 ALTA四段階注射法
1)第一段階注射
2)第二・第三段階注射
3)第四段階注射
4)ALTA投与直後
5 ALTA療法後の治療
6 ALTA注射後の経過
7 ALTA療法の副作用・合併症
4.5 A 痔瘻の手術;筋間痔瘻の手術
1 麻酔,体位
2 原発口の確認
3 筋間痔瘻の開放術式(lay-open法)
4 括約筋温存術式(coring-out法,くり抜き法)
5 高位筋間痔瘻の手術
6 痔瘻の治療成績
7 術後管理
4.5 B 痔瘻の手術;坐骨直腸窩痔瘻,骨盤直腸窩痔瘻の手術
1 複雑痔瘻とは
2 複雑痔瘻の診断
3 複雑痔瘻の手術
4 複雑痔瘻の型分類と術式
5 症例と解説
6 まとめ
4.6 A 裂肛の手術
1 側方皮下内括約筋切開術(LSIS)
2 皮膚弁移動術(SSG)
4.6 B 裂肛の化学的括約筋切開術
1 裂肛の治療方針
2 ニトログリセリン軟膏治療の実際
3 カルシウム拮抗薬による治療
4 ボツリヌス毒素による治療
4.7 デイサージェリー
1 痔疾患のデイサージェリーの実際
1)インフォームドコンセント
2)手術適応
3)術前検査
4)麻酔
2 痔核に対するディサージェリー
1)結紮切除半閉鎖法
2)ALTA注射療法
3 裂肛に対するデイサージェリー
1)側方皮下内括約筋切開術(LSIS)
2)用手拡張術
3)肛門形成術
4 痔瘻に対するデイサージェリー
1)切開開放術
2)Seton法
3)Coring-out
5 その他の疾患
6 術後疼痛
7 術後出血
◆第5章 肛門疾患診療のチェックポイント
1 診察のチェックポイント
2 痔核のチェックポイント
3 裂肛のチェックポイント
4 肛門周囲膿瘍・痔瘻のチェックポイント
肛門疾患は,内科・外科を問わず日常診療でポピュラーな疾患であり,その大半を占める痔核・裂肛・痔瘻は良性疾患である。これらの患者さんの受診の様式には,出血や痛みなどの症状で早期に受診する方と,長年自覚症状があっても「生命にかかわらない」「恥ずかしい」「診療の際強く痛むのではないか」などと受診を躊躇した結果,かなり悪化した状態で来院する方がいる。肛門・直腸の症状は日々の排便の都度みられることが多く,速やかに適切な治療がされない場合は徐々に進行していく。そのため精神的にも肉体的にも患者さんのQOLに大きくかかわる疾患であり,的確な治療によって良好なQOLを回復することが重要である。
肛門は全消化管の末端で,主な機能は便の保持と排泄であるが,その解剖と機能は複雑で,横紋筋で体性神経支配の外肛門括約筋と平滑筋で自律神経支配の内肛門括約筋の微妙な連携調整により機能している。これを充分理解しないままに治療が行われるならば,その目的が達せられないばかりか,術後障害を引き起こすことになりかねない。
治療においては保存的治療と外科的治療が行われるが,いずれも相当の部分で充分に有効である。ではどこに診療上の問題と難しさがあるのかというと,まずは正確な診断と患者の肛門の状態の正確な把握であり,これは経験に培われた丁寧な肛門直腸指診によって行われる。また,手術手技は比較的単純で「アッぺ,ヘモ,ヘルニア」と言われていたように一見簡単に思える部分があるが,そうとは言い切れない。単純ゆえに医師の経験が反映され,成否に大きく作用する。他の疾患と同様に,診断においても手術においても,正しい知識の上に積み重ねられた経験が重要である。
本書は,肛門領域で活躍されている先生方の経験の結晶で構成されており,肛門疾患の診療にあたる若手医師からエキスパート医師まで得るものが多々あると信じるところである。むろん至らぬ点も数々あるものと思われ,ご意見をいただき改善に努力する所存である。本書が肛門科診療の発展の一助になるならば望外の喜びである。
編者ら