食道裂孔ヘルニアは,先天的もしくは高齢や肥満といった後天的原因で,横隔食道靱帯がゆるんで,食道胃接合部が食道裂孔を通じて横隔膜より頭側の縦隔にはまり込んだ病態である。胃の一部が食道胃接合部とともに挙上した滑脱型がほとんどであり,食道胃接合部はそのままで胃の一部が横隔膜裂孔内で食道に隣接している傍食道型と,両者が混在した混合型,の3つにわけられる。
X線検査等で偶然発見される例も多く,無症状の人が多いが,胃食道逆流症状を呈した患者の大半は食道裂孔ヘルニアを併発しており,食道造影検査や上部消化管内視鏡検査等で診断される1)。
無症状の人も多く,食道裂孔ヘルニア単独での治療は不要であるが,胸やけや胸痛,咽頭違和感といった逆流性食道炎を併発した症例については内服治療が第一選択となる。喘息様の空咳の原因となることもある。制酸薬が効果を認めない場合,十二指腸液の逆流が原因と考えられる場合は,蛋白分解酵素阻害薬に変更する。これらの薬物治療が効果を発揮しない場合,手術治療も検討する。空咳に関して逆流性食道炎と喘息との関連を指摘する報告もあるが,胃酸の気管支への流入が原因とされており,逆流性食道炎の治療により軽快する症例も多い。
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