食道穿孔・破裂はその原因により,特発性,異物によるもの,医原性,に分類できる。診断・治療が遅れると,縦隔炎から膿胸,敗血症性ショックに進展する重篤な疾患であり,的確な治療方針の選択が重要である。
発症機転と臨床症状から本症を疑うことが診断のポイントである。ほとんどの症例が大量嘔吐を契機に発症し,急激な胸背部痛,上腹部痛,吐血,胸内苦悶,呼吸困難などを生じる。激烈な症状を呈してショック状態で搬送されることもある。本症が疑われた場合には,①胸部単純X腺,②胸部CT,③水溶性造影剤を用いた食道造影を行い,確定診断を得るとともに,縦隔内限局型か胸腔内穿破型かを判断することが,治療方針において重要となる。
食道穿孔を引き起こす代表的な異物は,有鉤義歯,魚骨,press through pack(PTP)包装薬剤などが挙げられる。喉や食道の異物感,自発痛,嚥下時痛,嚥下困難などの自覚症状が認められるので,いつ何を誤飲したのかを問診することが重要である。また,①胸部単純X腺(正面,側面),②胸部CTを行い,異物の局在,隣接臓器との位置関係,縦隔気腫の程度などを確認する。
原因として内視鏡的粘膜・粘膜下層切除術,食道狭窄拡張術,食道静脈瘤硬化療法などの内視鏡的処置によるもの,Sengstaken-Blakemoreチューブやオーバーチューブ挿入に伴うもの,が挙げられる。内視鏡操作時には穿孔部を確認した後速やかに内視鏡を抜去する。また,①胸部CT,②水溶性造影剤を用いた食道造影を行い,穿孔部位と縦隔気腫の程度などを確認する。
縦隔気腫を認めても縦隔内の汚染が軽度,炎症所見も軽度で全身状態が安定している場合には保存的治療を選択する。特発性食道破裂であっても,縦隔内限局型で上記の基準が当てはまる場合には,厳重な監視下での保存的治療を選択しうる。一方で,胸腔内穿破型は原則として,手術の適応となる。救命率の点から,発症から24時間以内の手術が推奨される。
なお,異物による食道穿孔例では,内視鏡による異物除去時の二次的食道損傷にも注意する必要がある。