胃の粘膜に発生する悪性腫瘍で時間とともに胃壁に深く浸潤し,リンパ節転移や遠隔転移を生じる。2019年には約12万4000人の患者が胃癌と診断され,2020年には約4万2000人の患者が胃癌で亡くなっている。胃癌の発生要因には,ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)の感染と喫煙がある。そのほかに,食塩・高塩分食品の摂取が胃癌の発生する危険性を高めることが報告されている1)。最近は食道胃接合部がんが増加傾向にある。
胃癌の進行度は,深達度(T)・リンパ節転移(N)・遠隔転移(M)で決定する。主に内視鏡,造影CTで診断するが,T因子とN因子については臨床診断と病理診断が必ずしも正確に合致しないことが知られている。
胃癌の治療は,基本的に「胃癌治療ガイドライン」2)に準じて進行度に応じた治療が行われる。
深達度が粘膜までと診断した場合は,内視鏡切除を行う(基本的に分化型がんが適応だが,未分化型がんでも大きさが2cm未満であれば内視鏡切除の適応となる)。内視鏡切除後の病理診断で,リンパ節転移が存在する可能性が生じる場合がある(脈管侵襲,深達度が粘膜下層より深い,未分化型がんで大きさが2cm以上,病変内に潰瘍成分がある等)。リンパ節転移存在のリスクスコアがガイドラインに記載されており,患者背景(年齢,併存疾患)により追加外科手術の必要性を考慮する。
内視鏡切除の適応外病変(深達度が粘膜下層と考えられる早期胃癌,筋層以深の進行胃癌)は,リンパ節郭清を伴う胃切除手術を行う。進行胃癌の場合は,解剖学的2群リンパ節までを完全に郭清するD2リンパ節郭清を行う。早期胃癌の場合は,若干郭清範囲を縮小したD1+リンパ節郭清を行う。
根治手術が施行された後の病理ステージがⅡあるいはⅢの場合,補助化学療法を行う。初診時に既に遠隔転移を伴う場合は,ステージⅣとして基本的に根治手術適応はなく,全身化学療法を行う。
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