日本医療機能評価機構は4月15日に公表した「医療安全情報No.185」で、使用済みの内視鏡を所定の場所に置かなかったことが原因で、洗浄・消毒をすることなく別の患者に使用した事例を紹介し、注意を呼びかけた。
機構によると、こうした事例は、2016年1月1日~22年2月28日までのおよそ6年間に9件報告されている。今回の医療安全情報では、そのうち2件の詳細を明らかにした。1件目の事例は、医師が使用済みの気管支鏡を本来の置き場ではなく、モニタの横にかけたままの状態で放置してしまったことが原因で発生。この医療機関では、検査の際に洗浄された気管支鏡を内視鏡室に取りに行く決まりとなっていたが、次の検査の担当医は気管支鏡がモニタ横にかけてあったために未使用だと思い込み、結果として未洗浄の気管支鏡を検査に使用してしまった。
もう1件の事例は、夜間に緊急の大腸内視鏡検査を同じ検査室で2例続けて行った際に起きた。この医療機関は検査後の内視鏡を使用済み内視鏡置き場に置くルールを定めていた。だが、1例目を担当した医師はこのルールを知らず、検査後の内視鏡を入っていた袋に戻し、検査室のカメラ置き場の清潔区域に置いた。このためカメラ置き場の清潔区域内にある内視鏡は袋が開封された状態になっていたが、2例目の検査の担当医は誰かが準備したものだと思いそのまま使用した。
事例が発生した医療機関では現在、再発防止策として、▶使用前・使用済みの内視鏡を置く場所をそれぞれ決め、職員に周知する、▶使用済みの内視鏡を置く場所がわかるように表示する、▶検査終了後は使用済みの内視鏡を決められた場所に置く―などの取組みを実施しているという。機構は、これらは一例であり、各医療機関で自施設に合った取組みを検討してほしいとしている。