中腸は,上腸間膜動脈に支配される十二指腸から横行結腸の口側約2/3までの部分であり,胎生約10週に回転しながら腹腔内に還納し,後腹膜へ固定される。腸回転異常症は,この中腸の回転・固定・間膜癒合に異常をきたした疾患である。Ladd靱帯によって上腸間膜動脈の腸間膜根部が狭小・捻転するため,診断が遅れると上腸間膜動脈領域の腸管が絞扼・壊死となる。腸回転異常症患児の80%以上は新生児期に発症する。迅速な診断と緊急手術が,本疾患取り扱いの要点である。
新生児の胆汁性嘔吐・下血では,まず本症を疑い迅速に診断を進める。
入院後,経鼻胃管による減圧と輸液を行い,診断のため腹部超音波検査を行う。先行して消化管造影検査を行うと,下位腸管にガスが流れ診断が困難となるため超音波検査を優先する。超音波血流検査で,上腸間膜動脈(SMA)を軸にして上腸間膜静脈(SMV)が渦状に描出されるwhirl pool signや,SMAとSMVの位置関係が逆転するSMV rotation signを認めれば確定診断となる。なお,SMAとSMVが前後に並ぶ場合でも,15~20%に腸回転異常が認められるとされるため,注意が必要である。腹部超音波検査で本症の診断がついた場合には緊急手術を行う。
超音波検査で腸回転異常症を除外できない場合や,時間的余裕がある場合には上部消化管造影・下部消化管造影を施行する。上部消化管造影検査では,十二指腸での通過障害,十二指腸・空腸のcorkscrew sign,Treitz靱帯の形成がない,ことで診断できる。しかし,腸回転異常症でも8~17%は上部消化管造影検査で正常に見えるという報告や,消化管造影で典型画像を示すのは43%という報告1)もあり,注意が必要である。下部消化管造影検査では,回盲部の位置異常や横行結腸の狭窄像が本症の診断根拠となる。
超音波診断・消化管造影検査が可能な医師が不在の場合には,腹部CTも考慮される。急性期の脱水の評価を待つ時間的余裕がない場合には,腎負荷になる造影剤は使用しない。また,小児外科医が不在の施設で当疾患が否定できない場合には,夜間であっても小児外科専門施設へ搬送する。
残り945文字あります
会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する