日本医療機能評価機構は5月16日に公表した「医療安全情報No.186」で、治療開始前に血液検査の結果の確認を怠ったために本来は中止すべき抗がん剤を投与した事例を紹介し、注意を喚起した。
こうした事例の機構への報告は、2018年1月から22年3月までのおよそ4年間で6件に及ぶ。今回掲載された事例をみると、事例1はmFOLFIRINOX(フォリフィリノックス療法)の2コース目の治療のために入院を予定していた患者で起こった。入院前に外来で血液検査が行われたが、外来担当医は検査値の確認を失念した。病棟担当医は外来担当医が血液検査値を確認した上で入院を決めたと思い、検査値を改めて確認することなく入院当日に抗がん剤の投与を確定・開始。この日の夜になって病棟薬剤師から入院前の血液検査で好中球数が693/μLだったとの指摘があったことで、抗がん剤の投与が中止された。
事例2の患者は外来でアバスチン+アリムタ療法を実施していた。医師は来院後の血液検査でクレアチニンの値が低かったことを確認しないまま、抗がん剤の投与を決定。4コース目の投与で薬剤師による面談の対象外だったことや、外来化学療法室の看護師は検査値を確認する手順になっていなかったことから、薬剤師や看護師が検査値を確認する機会もなく、指示通り抗がん剤が投与された。患者は投与から2週間後に発熱を主訴に受診し、精密検査の結果、発熱性好中球減少症および急性腎不全と診断された。
事例が発生した医療機関では再発防止のため、▶医師は血液検査値の評価を行ったことをカルテに記載後に抗がん剤の指示を確定する、▶薬剤師はレジメンの種類、投与量、検査値、前投薬などを把握するチェックリストを作成し、抗がん剤を調製する際に確認する─取り組みが行われているという。