速やかに高濃度酸素を投与し,脳・心筋壊死の進行を抑えつつ,全身管理を行う。
一酸化炭素(CO)は無味無臭の気体であり,初期症状は頭痛や嘔気など非特異的であることから,中毒を疑うには詳細な情報収集が重要である。暖房や調理器具などCOが発生しうる状況があるか,換気状况や同じ空間にいたほかの人の症状も確認する。目撃者および救急隊からも聴取する。また,練炭自殺の可能性や,冬季災害ではCO中毒が増加することも念頭に置いておく。
初期症状である頭痛,嘔気,めまいに続き,頻脈・頻呼吸,紅潮,発汗,視力障害などがある。重症では意識障害,痙攣,循環・呼吸不全をきたす。一部を除いてパルスオキシメーターではCO-HbとO2-Hbとを識別できないため,動脈血ガス分析を行う。また,乳酸アシドーシスは低酸素状態を反映し,重症度評価に有用である。
高濃度酸素投与を直ちに開始し,組織低酸素状態を解除することが重要である。重症では呼吸・循環管理を行い,全身状態の安定化を図る。また,代謝性アシドーシスの治療は酸素運搬能を低下させるため,少なくともCO-Hbが正常化するまで行わない。
一手目 :直ちに高濃度酸素投与
CO-Hb値が低値でも,組織内COの排出は遅延するため,通常6時間以上を要する。
二手目 :〈全身状態の悪い場合〉気管挿管を行い,人工呼吸器管理
意識障害下でも確実に100%酸素投与と十分な換気ができる。
三手目 :〈重症の場合に検討〉高気圧酸素療法(hyperbaric oxygen therapy:HBO)
2~3倍の気圧下で100%酸素を投与する治療法で,CO-Hbの半減期を平均20分程度に短縮できる。急性期のCO排泄促進効果が認められており,24時間以内の導入が望ましい。適応は各施設の指針によるが,CO-Hb値が25~40%以上,頭部CTおよびMRIで異常所見を認めた場合などは検討すべきである。しかし,国内の主な稼動施設は減少傾向であり,患者の状態や搬送リスクなどを考慮して適応を決定する必要がある。特に大災害で多傷病者同時発生時には人工呼吸器管理までで対応せざるをえないこともある。
残り1,557文字あります
会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する