洞機能不全は,洞結節細胞もしくは周囲心房筋の加齢に伴う変性,線維化等が主な病態であり高齢者に多い。洞不全症候群(sick sinus syndrome)の定義は,「洞性徐脈,洞停止,洞房ブロック等による徐脈が原因となり,失神,痙攣,眼前暗黒感,めまい,息切れ,易疲労感などの脳虚血症状および心不全症状を呈する状態」である。したがって,心電図所見だけでは洞不全症候群の診断はできない。
失神,痙攣,眼前暗黒感,めまい,息切れ,易疲労感を自覚することが多い。
洞不全症候群の心電図所見の分類としてRubenstein分類が用いられる。Ⅰ型は50回/分以下の洞性徐脈が持続する場合,Ⅱ型は洞停止あるいは洞房ブロック,Ⅲ型は徐脈頻脈症候群である。12誘導心電図やホルター心電図でこれらの心電図所見が得られない場合,体外式イベントレコーダ,植込み型ループレコーダが有用である。症状が運動時に出現する場合は,運動時の心拍応答不全が疑われるため,運動負荷心電図を行うことが望ましい。基礎心疾患の把握のために心エコー図検査も施行すべきである。臨床心臓電気生理検査の積極的な適応はない。しかし,失神等の症状から徐脈性不整脈が強く疑われるものの心電図所見が得られていない場合,心房刺激による洞房伝導時間の計測,オーバードライブ抑制試験による洞結節自動能の評価が洞不全症候群の診断に補助的に有用なことがある。
徐脈があっても,脳虚血症状や心不全症状がなければ病的とは言えない。よく鍛えられたアスリートには生理的な洞性徐脈が認められる。したがって,洞不全症候群の診断においては,脳虚血症状や心不全症状があり,それが徐脈に起因することを確認することが重要である。
β遮断薬,Ca拮抗薬(ベラパミル,ジルチアゼム),ジギタリス,Ⅰ群およびⅢ群抗不整脈薬によっても洞性徐脈が生じる。これらの薬剤が必要不可欠か否かを判断する。
最近,高齢者を中心に増えているのが,心房細動停止時に洞停止,洞徐脈を呈する徐脈頻脈症候群である。失神を伴う場合は緊急性が高い。この場合,心房細動アブレーションで発作性心房細動が消失すればペースメーカ治療は回避できる。「不整脈非薬物治療ガイドライン(2018年改訂版)」でも,徐脈頻脈症候群を伴う発作性心房細動はカテーテルアブレーションがクラスⅡaで推奨されている1)。
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