日本医療機能評価機構が6月27日に公表した医療事故情報収集等事業の第69回報告書によると、医療事故情報の報告義務対象医療機関(特定機能病院など)では2022年1~3月に1348件の医療事故の報告があったことがわかった。このうち死亡例は106件、障害残存の可能性が高い事例も152件あった。
医療事故の内容で最も多かったのは「療養上の世話」の456件で、報告全体の33.8%に及ぶ。次いで多かったのは、「治療・処置」(453件:構成比33.6%)、「薬剤」(106件:7.9%)、「ドレーン・チューブ」(101件:7.5%)など。事故の程度別でみた内訳は、「死亡」(106件:7.9%)、「障害残存の可能性がある(高い)」(152件:11.3%)、「障害残存の可能性がある(低い)」(457件:33.9%)、「障害残存の可能性なし」(323件:24.0%)、「障害なし」(272件:20.2%)などとなった。
同じ期間のヒヤリ・ハット事例の報告は7360件だった。その具体的内容では、「薬剤」(2934件:39.9%)、「療養上の世話」(1398件:19.0%)、「ドレーン・チューブ」(1065件:14.5%)が上位を占め、いずれも1000件を超える。医療が実施されたのは、このうち2828件(構成比38.4%)。残り4532件について仮に医療を実施した場合の影響度を聞いたところ、9割以上は「軽微な処置・治療が必要もしくは処置・治療が不要と考えられる」だったが、「死亡もしくは重篤な状況に至ったと考えられる」(87件:構成比1.9%)、「濃厚な処置・治療が必要であると考えられる」(247件:5.5%)との回答もあった。
報告書ではこのほか、患者に薬剤を投与、または渡す際に発生した医療事故やヒヤリ・ハット事例の詳細な分析も実施。該当する医療事故は21年7~12月の間に56件報告され、発生場所は内服薬では病室が多く、注射薬での事故は病室、外来処置室、救急外来など様々な場所で起きていた。事故のパターンは、患者を取り違えた事例と薬剤を取り違えた事例に大別されたが、どちらの事例においても患者と薬剤の照合ができていなかった。このため報告書は、「患者と薬剤が合っているかを照合することが必須であり、患者の氏名をどのように確認し、薬剤とどのように照合するのか、医療機関で具体的な手順を明確にして周知することが重要だ」と事故防止に向けた対策を促した。