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光干渉断層計(OCT)による緑内障の前視野障害期診断 【OCTの解像度の向上に伴い,GCC厚を測定することで診断が可能に】

No.4823 (2016年10月01日発行) P.59

溝上志朗 (愛媛大学眼科准教授)

登録日: 2016-10-04

最終更新日: 2016-10-06

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光干渉断層計(optical coherence tomography:OCT)が,眼科医療の現場で急速に普及している。OCTは網膜の断層像を非侵襲的かつ短時間で撮像できるため,これまで加齢黄斑変性症に代表される網膜疾患の診療を目的として,基幹病院を中心に導入されてきた。

しかし最近,OCTを購入する眼科クリニックが急増した。その一番の理由としては,OCTで緑内障の早期診断ができるようになったことが挙げられる。緑内障は進行性の網膜神経節細胞死であり,発症初期には網膜内層に位置する,網膜神経節細胞複合体(ganglion cell complex:GCC)の厚みが菲薄化することが知られている1)。近年,OCTの解像度が飛躍的に向上したことで,網膜各層の層別解析が可能となり,このGCC厚を測定することで,緑内障診断が可能となった。さらに緑内障では,視野異常が生じる前より網膜神経節細胞死が始まっているため,OCTを用いると,まだ視野障害が生じる前の,いわゆる前視野障害期の診断さえもできるようになった。

緑内障はわが国の中途失明原因の第1位であるが,初期には自覚症状がないため,検診による早期発見が重要である。今後,OCTが検診現場にも普及することで,より多くの患者の早期診断が可能となり,失明率の低下につながることが期待されている。

【文献】

1) Tan O, et al:Ophthalmology. 2009;116(12): 2305-14.

【解説】

溝上志朗 愛媛大学眼科准教授

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