浮腫とは,間質液の増加により軟部組織の腫脹が生じた状態である。液体の主成分は水であるが,感染やリンパ管閉塞がある場合には,蛋白質および細胞を多く含む液体が蓄積する可能性がある。その原因は多岐にわたり,①毛細血管内の静水圧上昇に起因するもの,②毛細血管内の膠質浸透圧低下に起因するもの,③血管透過性亢進に起因するもの,④リンパ系およびリンパ系が流入する静脈系の還流障害に起因するもの,が挙げられる。原因の機序に応じた治療を考慮する必要がある。
全身性浮腫の場合には,体重の変化,靴下の跡がつくか,尿量の変化,呼吸器症状の有無,腹痛・下痢など消化器症状の有無,薬剤の内服歴(非ステロイド性抗炎症薬,ステロイド,ACE阻害薬,経口避妊薬,漢方薬)などについて詳しく問診を行う。
局所性浮腫の場合には,外傷・熱傷,虫刺症,発赤や疼痛,瘙痒の有無について問診を行う。
女性患者の場合は,妊娠の有無,浮腫が月経期間と連動しているかを確認する。
浮腫の原因となる疾患〔心疾患,肝疾患,腎疾患,悪性腫瘍(関連するすべての手術および放射線療法も含む),凝固亢進疾患〕だけでなく,感染症〔レンサ球菌感染症,最近のウイルス感染症(肝炎など)〕や嗜好(慢性のアルコール乱用,食塩摂取量),内服している薬剤〔浮腫を引き起こすことが知られている薬剤(カルシウム拮抗薬や非ステロイド性抗炎症薬など)〕についても聴取する。
全身性浮腫の場合,血圧,脈拍,呼吸数,酸素飽和度などのバイタルサインに注意する。血圧の評価は特に重要である。
浮腫の診察は,下腿腓骨前面や眼瞼で行う。全身性なのか局所性なのか,圧痕性浮腫なのか非圧痕性浮腫なのか,圧痕の戻りは早いのか遅いのかを確認する。非圧痕性浮腫は甲状腺機能低下症で特徴的である。圧痕の戻りが早い場合(40秒未満)であれば低アルブミン血症,遅い場合(40秒以上)は心不全や腎不全が疑われる。
局所性浮腫の場合は,左右差,発赤・腫脹・疼痛といった炎症所見の有無,外傷・熱傷・虫刺痕の有無を確認する。
一般診察では,全身状態(体重,尿量),頭頸部(眼瞼,貧血,黄疸,甲状腺,頸静脈),胸部(心拡大,心雑音,肺水腫),腹部(肝脾腫,腫瘤,腹水),四肢(圧痕の有無,全身性/局所性),皮膚の視診(黄疸,皮下出血,くも状血管腫)を確認する。
全身性浮腫で緊急処置が必要となるのは,うっ血性心不全をきたしている場合である。
呼吸不全を伴う場合には,酸素投与や非侵襲的陽圧換気(NPPV)を用いて呼吸管理を行う。また,利尿薬の静脈投与を考慮する。
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局所性浮腫の突然の発症として顕在化する,生命を脅かす急性疾患が治療の対象となる。局所性浮腫の突然の発症は,急性深部静脈血栓症,軟部組織感染症,または血管性浮腫を示唆する。
低酸素血症に対しては酸素投与を行う。低血圧を伴う右心不全に対しては,ドブタミン,ノルアドレナリンの投与を行う。循環動態が保てないときには,V-A ECMOの導入を考慮する。
速やかな広範囲の外科的切除(デブリードマン),十分量の抗菌薬投与を行う。
気道狭窄や閉塞時の気道を確保し,抗ヒスタミン薬,ステロイドの投与を行う。
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