薬事・食品衛生審議会薬事分科会(分科会長:太田茂和歌山県立医大薬学部教授)は7月20日、医薬品第二部会との合同会議を開き、塩野義製薬が「緊急承認制度」の枠組みで承認申請している新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬「ゾコーバ錠125mg」(一般名:エンシトレルビル フマル酸)について「現時点では有効性が推定されると判断できない」との理由で継続審議とすることを決めた。
ゾコーバについては、医薬品第二部会が6月22日に審議。「さらに慎重に議論を重ねる必要がある」として緊急承認の判断を見送っていた。7月20日の合同会議では、第二部会の意見を踏まえ、あらためて緊急承認の可否について審議した。
ゾコーバの第2/3相臨床試験のうち、オミクロン株流行後の感染者を中心に評価がなされたPhase 2b partの解析結果では、1日1回、5日間の経口投与でプラセボ群に比べ有意に優れた抗ウイルス効果は示されたものの、臨床症状の改善効果については統計学的に有意な差は認められなかった。 第二部会ではこの点が特に問題視され、「ウイルス量は減少するものの臨床症状の改善は認められないという結果。ウイルス量が減少することで感染を抑えたり、重症化を抑えたりするとの主張は想像にすぎない」などの意見が出された。
一方、塩野義は、20日の合同会議にゾコーバの有効性に関する見解を提出。症状に関する評価項目である「COVID-19の12症状合計スコアのDay 1からDay 6までの単位時間あたりの変化量」では有意な結果が得られなかったものの、「高い抗ウイルス効果」「呼吸器症状での症状改善」「オミクロン株に特徴的な5症状での症状改善」「COVID-19症状消失までの時間の短縮」「Long COVID(後遺症)に関連すると考えられる症状遷移リスクの低下」などを総合的に判断すると有効性は推定されると主張した。
さらに、ゾコーバはオミクロン株の新たな亜種であるBA.4系統やBA.5系統に対しても抗ウイルス活性を示すことが確認されているとし、「第7波を見据えても、治療の選択肢を増やして緊急時に備えることは公衆衛生上重要」と訴えた。
合同会議での審議の結果、ゾコーバの承認については「継続審議」扱いとし、現在実施中の国際共同第2/3相試験の第3相パートの結果などの提出を待ってあらためて審議することとなった。
後藤茂之厚労相は7月22日の記者会見で、「現下の感染拡大に対しては経口薬2剤(ラゲブリオ、パキロビッド)に加え、点滴薬ベクルリー(レムデシビル)が市場流通しており、適応に応じて適切かつ早期に投与できる体制を構築・強化している」としながら、ゾコーバについては「第3相試験の結果等が得られた場合には速やかに審議いただく」との考えを示した。第3相パートの結果は今秋にもまとまる見通しだ。