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心肺停止[私の治療]

No.5129 (2022年08月13日発行) P.40

遠藤智之 (東北医科薬科大学医学部救急・災害医療学病院教授/同大学病院救急センターセンター長)

登録日: 2022-08-16

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  • 心肺停止(cardiopulmonary arrest:CPA)に対する治療の根幹は,質の高い心肺蘇生(cardiopulmonary resuscitation:CPR)を行いながら,CPAに陥った原因を検索し,即座に可逆的病態に対する治療を行うことである。心拍再開が得られれば,気道・呼吸・循環の安定化に努め,意識障害が遷延する場合は体温管理療法を考慮する。高次医療機関であれば,難治性心室性不整脈,肺塞栓症,偶発性低体温症,薬物中毒などによる心肺停止に対してECMOによる蘇生(extracorporeal CPR:E-CPR)を考慮する。

    ▶病歴聴取のポイント

    院外CPAであれば,家族・関係者・救急隊から,卒倒前の状況,卒倒の目撃の有無,バイスタンダーCPRの有無,市民によるAED使用の有無,既往症,アレルギー,内服薬,最終飲食などについて情報を集める。院内CPAであれば,入院時診断名,投与中の薬剤,急変前の前駆症状とバイタルサイン,DNARオーダーの有無などについて確認する。

    ▶バイタルサイン・身体診察のポイント

    【バイタル】

    死戦期呼吸もしくは無呼吸であり,頸動脈もしくは大腿動脈で脈拍を触知しない。CPR中は末梢循環不良のためパルスオキシメーターの値は参考値とする。バッグマスクに呼気炭酸ガスモニターを装着し,換気状態とCPRの質を評価する。

    【身体診察】

    瞳孔反応,皮膚色調,体熱感,眼瞼結膜,頸静脈怒張,胸郭挙上の左右差,頸部・胸部皮下気腫,四肢の浮腫などについて確認する。

    ▶緊急時の処置

    「JRC蘇生ガイドライン2020」の心停止アルゴリズムに沿って,質の高いCPRを行う。バッグマスク換気が良好であれば,気管挿管を急ぐ必要はない。

    〈初期調律が心室細動(VF)/無脈性心室頻拍(VT)の場合〉

    一手目 :速やかに除細動を行い,除細動後,直ちに胸骨圧迫を再開

    二手目 :〈2回目のリズムチェックでもVF/無脈性VTの場合〉除細動実施後,直ちに胸骨圧迫を再開,アドレナリン「テルモ」注シリンジ(アドレナリン)1回1mg(静注)

    二手目 :〈2回目のリズムチェックで無脈性電気的活動(PEA)/心静止の場合〉アドレナリン「テルモ」注シリンジ(アドレナリン)1回1mg(静注)

    エコー,血液ガス分析,病歴,身体所見などから可逆的原因を検索して治療を行う。

    三手目 :〈3回目のリズムチェックでもVF/無脈性VTが持続している場合〉抗不整脈薬:アミオダロン塩酸塩「TE」注(アミオダロン塩酸塩)1回300mg(静注),またはリドカイン「テルモ」注シリンジ(リドカイン塩酸塩)1回1.0~1.5mg/kg(静注)

    四手目 :〈三手目以降もVF/無脈性VTが持続している場合〉2分ごとのリズムチェックと除細動を継続

    10分以上の蘇生処置でも心拍再開が得られない場合はE-CPRを考慮する。

    〈初期調律が無脈性電気活動(PEA)/心静止の場合〉

    一手目 :直ちに胸骨圧迫を再開,アドレナリン「テルモ」注シリンジ(アドレナリン)1回1mg(静注)以後3~5分ごとに繰り返し投与

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