株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

【識者の眼】「コロナ後遺症の治療時には性善説に立とう」新見正則

No.5137 (2022年10月08日発行) P.61

新見正則 (オックスフォード大学医学博士、新見正則医院院長)

登録日: 2022-09-21

最終更新日: 2022-09-21

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

新型コロナウイルス感染後遺症(コロナ後遺症)の病態は様々です。特に面倒なのは倦怠感とブレインフォグです。倦怠感は「重力に逆らえない」イメージです。ベッドから起き上がれない、椅子に座っていられない、洗髪のために手を上げられないなどです。ブレインフォグは「パフォーマンスの低下」のイメージです。以前のように意志決定ができない、記憶力が落ちた、アイデアが浮かばないと言われることが多いです。

そして保険適用の検査で異常が出ることは稀です。不顕性感染やワクチン接種後でも典型的な後遺症の症状を示すことがあります。不顕性感染にて後遺症になるとすると、PCR検査や抗原検査で陽性となる時期を過ぎて、そして抗体価が下がった後に後遺症が発症すれば、実は新型コロナとの関係を肯定する証拠がありません。そんな患者さんを診ると、邪悪な(性悪説に基づく)自分がちょっと登場します。

「本当に病気なのだろうか?」「詐病ではないか?」と呟く自分がいるのです。性悪説の自分ですね。しかし、たくさん患者さんを診ていると、成績もよく人間関係も問題なく、休む理由がない学生が強い倦怠感を訴えます。会社の経営者で休むと会社の業績に影響を与えるような人がブレインフォグでパフォーマンスが低下していると訴えます。そんな、後遺症を訴えても本人になんの利益もない人が実在することを知ると、コロナ後遺症は間違いなく病気として存在すると腑に落ちるようになるのです。

もちろん、休みたい人がコロナ後遺症を訴えることもあるでしょう。しかし、医師は性善説に立って、優しく本人の訴えに寄り添うことが必要と思っています。行政の人は致し方なく性悪説に立つことも必要でしょう。問題は明らかに有効な西洋医学的な治療が存在しないことです。コロナ後遺症に対する1000例規模のランダム化された大規模臨床試験が存在しないということです。

そんな治療の正解がない場合は漢方で納得解を探しましょう。患者が訴える症状に最初から漢方が当たる確率は高くはありません。しかし、効くことがあるのです。効かない時は順次漢方薬を試していけばいいのです。保険適用漢方薬は148種類あります。いろいろな症状が保険病名には記載されています。保険病名から逸脱しない範囲で精一杯可能性のある漢方を探し続けることが大切と思っています。

新見正則(オックスフォード大学医学博士、新見正則医院院長)[正解のないときは納得解を求めよう!②]

■本シリーズの記事
# 正解のないときは納得解を求めよう!①
コロナ後遺症の治療に漢方は最良の納得解となる
https://www.jmedj.co.jp/journal/paper/detail.php?id=20448

# 正解のないときは納得解を求めよう!②
コロナ後遺症の治療時には性善説に立とう
https://www.jmedj.co.jp/journal/paper/detail.php?id=20449

# 正解のないときは納得解を求めよう!③
コロナ後遺症の限界例にはフアイア加味方で
https://www.jmedj.co.jp/journal/paper/detail.php?id=20450

ご意見・ご感想はこちらより

関連記事・論文

もっと見る

関連物件情報

もっと見る

page top