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進行性核上性麻痺[私の治療]

No.5136 (2022年10月01日発行) P.40

饗場郁子 (国立病院機構東名古屋病院臨床研究部長)

登録日: 2022-10-01

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  • 進行性核上性麻痺(progressive supranuclear palsy:PSP)はパーキンソニズムを呈する神経変性疾患で,垂直性核上性注視麻痺,姿勢保持障害を主徴とし,認知機能障害,前頭葉徴候などを呈する1)2)。薬物療法に関しては「パーキンソン病薬の効果がみられない,あるいは一過性に効果がみられても持続しない」という特徴があり,パーキンソン病に比べ進行が速い1)2)

    ▶診断のポイント

    典型例(リチャードソン症候群)では,初期から姿勢保持障害・転倒が目立ち,その後垂直方向優位の眼球運動障害が現れる。MRIでは脳幹被蓋部の萎縮を認める。典型例以外に進行性すくみ足を主徴とする病型など,7つの臨床病型が知られている2)

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    抗パーキンソン病薬の効果が乏しく対症療法が中心となる3)。患者の症候に合わせて,理学療法・作業療法・言語聴覚療法などのリハビリテーションを初期から進行期まで実施する。

    【リハビリテーション】

    理学療法:頸部・四肢の強剛に対するストレッチは進行期まで重要であり,臥床状態になっても関節可動域の維持に努める。姿勢保持障害に対するバランス訓練は転倒予防のために必須である。いずれの訓練も,転倒しないよう臥位あるいは坐位で行うか,立位でバランス訓練を行う場合にはバーを把持するなど安全に配慮する。

    作業療法:個々の症候と療養環境に合わせ,日常生活動作訓練を行う。転倒予防のために,扉の開け方,椅子への近づき方などの動作指導を行う。すくみ足がある場合には,移動スペースはできるだけ広くするなど環境整備を行うとともに,患者の注意力レベルに応じて,適切なキュー(視覚・聴覚・触覚)を選び,生活の場に施す。

    言語聴覚療法:言語訓練,嚥下訓練,高次脳機能訓練を実施する。吃音がある患者にはペーシングボードを使い,1音ずつゆっくり話す訓練を行う。嚥下障害はPSPの生命予後に密接に関連する。誤嚥性肺炎も必発であるため,可能な限り早期より嚥下障害の状態を評価し,嚥下訓練とともに食形態,摂取方法などを提案する。初期には先行期の障害,すなわち食物が口腔内にあるにもかかわらずどんどん詰め込む傾向があり,食事時間が短くなるので,家族が声かけし,ゆっくり食事をすることも大切である。経口摂取が困難になってきたら補助食品や経管栄養を併用し,栄養状態が悪化しないよう努める。

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