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特集:HPVワクチン接種後の機能性身体症状への対応

No.5136 (2022年10月01日発行) P.18

鈴木富雄 (大阪医科薬科大学病院総合診療科科長)

登録日: 2022-09-30

最終更新日: 2022-09-28

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1991年名古屋大学医学部卒。2000年名古屋大学医学部附属病院総合診療部,06年同附属病院統合診療部講師。14年大阪医科大学地域総合医療科学寄附講座特任教授および同附属病院総合診療科科長に就任。

1 具体例をもとに考える,機能性身体症状への対応
2022年4月からヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンの積極的勧奨が再開された。接種後の多様な症状はワクチン固有の問題ではなく,「機能性身体症状」としてとらえるのが妥当である。
下記症例をもとに,HPVワクチン接種後の機能性身体症状にどのように対応すればよいのか解説する。



(1)病歴聴取と身体診察
起立性調節障害の体位性頻脈症候群(POTS)と慢性疼痛が重なった機能性身体症状として対応した。
(2)POTSとは
起立時にめまいなどの起立不耐症状を伴うが,起立性低血圧は認めず,高度の頻脈をきたす病態の総称である。
(3)慢性疼痛とは
慢性疼痛は,炎症性などの“侵害受容性疼痛”や,神経損傷性などの“神経障害性疼痛”に代表される器質性疼痛に加え,心因性などの“非器質性疼痛”によっても起こりうる。
(4)機能性身体症状とは
何らかの身体症状はあるものの,画像検査や血液検査で症状に合致する異常所見が見つからない状態のことである。DSM-5の「身体症状症」として対応するのがよいと考える。
(5)身体症状症とは
主に全身の疼痛,呼吸困難,めまい,動悸などの症状があり,不安と抑うつ症状も併発しやすく,「不定愁訴」「自律神経失調症」などの診断名をつけられていることが多い。身体症状症の患者の不安を理解し,対応の原則に従い,丁寧に説明を行うことが必要である。
(6)症状と治療方針に関する説明─原因探しの旅からの解放
身体と精神という二元論で別々に語るのではなく,相互に関連して症状となっていると説明。「外部から刺激を与えていないのに症状を強く感じるのは,大脳の神経経路のある部分が過敏になりすぎて,通常は感じなくてもよい感覚が異常に増幅して伝えられている状態」と話をして,治療方針を説明した。
(7)難治性の症状に心因性要因が大きく関係する場合の注意事項
医師も患者も症状に固執し,原因探しに没頭するのではなく,症状も包括しながら日常生活全体の質を改善することに,治療の主眼を置く。
(8)本症例のその後の経過
薬物療法に加え,身体症状症の診療原則に則り,簡易的な認知行動療法を行いながら,3年の診療経過の中で症状は改善した。

2 予防接種ストレス関連反応と解離性神経症状反応
世界保健機関(WHO)は,ワクチン接種後の有害事象について,「予防接種ストレス関連反応(ISRR)」を提唱した。急性反応には急性ストレス反応と血管迷走神経反射があり,遅れて発症する異常運動,非てんかん性痙攣などを「解離性神経症状反応(DNSR)」と名づけた。
HPVワクチン接種後の機能性身体症状は,ISRRの中のDNSRに相当すると考えられるが,生物医学的な観点のみならず,心理社会的な観点が重要である。ワクチン接種に関わるすべての医療者は,この概念を正しく理解し,適切に対応する必要がある。

3 必要に応じて協力医療機関と連携を
診療の中で困難があれば,厚生労働省のHPに「ヒトパピローマウイルス感染症の予防接種後に生じた症状の診療に係る協力医療機関」の一覧が掲載されているので,連携をとりながら診療を行う。

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