明らかな誘因なしに免疫的機序により血小板減少をきたす後天性疾患で,小児から高齢者まで幅広い年齢層でみられる。出血傾向が唯一の症状で,点状~斑状出血が多いが,無症候例も少なくない。一方,重症例では粘膜出血(鼻出血,消化管出血,血尿など)を起こし,時に致命的な脳出血を生じる。
除外診断が基本である。血小板減少(10万/μL未満),赤血球系および白血球系は正常で,かつ血小板減少をきたす他の疾患を除外できる場合に診断する。
治療の目標は血小板数を正常に戻すことではなく,重篤な出血を予防しうる血小板数を維持することである(血小板数3万/μL以上,可能なら血小板数5万/μL以上)。まずピロリ菌(Helicobacter pylori)感染の有無を評価し,陽性例では除菌により50~70%で血小板数の増加が得られる。致死的出血のリスクが高く,血小板数の速やかな増加が必要な場合は免疫グロブリン大量療法(intravenous immunoglobulin: IVIG),メチルプレドニゾロンパルス療法,血小板輸血を単独または組み合わせて行う。
ピロリ菌陰性,もしくは除菌療法で血小板増加が得られなかった場合は,出血症状,血小板数に基づいて治療適応を決定する。血小板数2万/μL以上で出血症状がない,あるいは軽微な場合には無治療で注意深い経過観察を行う。ただし,高齢者,コントロール不良の高血圧症患者や外傷リスクの高いスポーツ選手など,出血リスクが高い場合は治療の対象になりえる。
ファーストライン治療は副腎皮質ステロイド療法であるが,治療目標を達成できない,もしくは副作用のためステロイドの継続使用が困難な場合はセカンドライン治療に移行する。セカンドライン治療として,①脾摘,②リツキシマブ,③トロンボポエチン(thrombopoietin:TPO)受容体作動薬があり,個々の治療法の長所と短所に基づいて症例ごとにいずれかを選択する。
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